『新型コロナウイルス総覧 批評編上』「真実の日本史 真実の世界史『日之本文書』」3339回

 

  最悪のコロナ対応(9月下旬)

アメリカの新型コロナウイルスの感染者は、1015日現在、約798万人で世界の約20%、死者数も21万人でこれも世界の約20%を占めている。トランプは新型コロナウイルスを軽視し、その実態をつかむこともなく、検査数を増やすこともなく、有効な対策も有効な治療法も立てることなく、経済活動、企業活動を優先し、感染症の拡大を全国、全州に広めてしまった。

この9月中旬以降のトランプ政権の新型コロナウイルスについて、対応がいかにひどいものであったかを日を追って観ることから始めていこう。

915、米疾病対策センター(CDC)のロバート・レッドフォード所長(医学博士)は大統領を横にしてこう述べた。「感染防止にはワクチンよりもマスク着用が有効だ」。同所長が言い終わるか終わぬうちに、トランプは「マスクなんかよりもワクチンの方が大事だ」と吐き捨てるように反論した。トランプは明白な根拠を示すことなく、「ワクチンは3週間から4週間以内に完成する可能性がある」と述べた。 

916、CDCのレッドフィールド所長が米上院公聴会で「ワクチンは生産承認されてから接種には6か月から9か月かかる。実際の米国民が受けれるのは早くて来春以降だ」と発言するや、トランプは「この男の言うことは間違っている。不正確な情報を基に喋っているだけだ」「ワクチンは10月に完成する。配布開始は10月か11月の可能性がある。年内に1億回分の接種量が確保できる。それより遅くなるとは思わない」と反論した。

 916、世界各国で米国への好感度が急落していることが、米国のピュー・リサーチ・センターの調査で分かった。トランプ政権下での新型コロナウイルス対策の失敗が影響しているとみられ、多くの国では過去最低レベルだ。米国に好感を持つ人の割合は昨年と比較できる11カ国全てで10ポイント以上下がり、日本など7カ国では過去最低の水準となっている。

 91611月の米大統領選で再選を目指す共和党のドナルド・トランプ大統領は、開発が進む新型コロナウイルスのワクチンについて「10月中旬にも配布を開始できる」と繰り返した。一方で政府の専門家は「広く一般への接種が可能になるのは2021年後半以降」との見通しを表明。選挙を意識しウイルス対策の功績に前のめりになるトランプとの食い違いを見せている。米疾病対策センター(CDC)のレッドフィールド所長は同日、上院公聴会に出席し「国民に広く提供できるようになるのは、来年の第2四半期(46月)後半から第3四半期(79月)以降になる」と証言した。会見で食い違いを指摘されたトランプは「彼は質問を誤解し混乱したのだろう。間違った情報だ」などとレッドフィールド氏の見解を否定した。

917トランプ政権の新型コロナウイルスへの対応をめぐり、新事実が相次いで発覚している。国民の健康よりもトランプ政権の政治的思惑が優先されたのではないかとの懸念が高まる可能性がある。ニューヨーク・タイムズは同日、検査対象者を狭めた米疾病対策センター(CDC)の勧告について、CDCの研究者が書いたものではなく、厚生省がCDCの公式サイトに「投下した」と報じた。ワシントン・ポストも先ごろ、米郵政公社(USPS)と厚生省が今春、感染が深刻な地域を皮切りに全米にマスクを送付する計画を進めたものの、パニックが起きる可能性を懸念したホワイトハウスによって繰り返し拒否されたと伝えた。

 

918、さらにトランプ大統領は、新型コロナワクチンについて、来年4月までには全国民の分を確保できると記者団に説明。またしても政権内の専門家の試算と食い違う見解を示した。ただ、トランプ氏の楽観的な見通しにもかかわらず、臨床試験を実施中のワクチンで米食品医薬品局(FDA)から承認されたものはまだない。トランプは著名ジャーナリストのボブ・ウッドワード氏に対し、新型コロナウイルスの致死性を認識しつつも「常に軽く見せようとした」と明かしており、一連の報道からは、こうした意向が各種政府機関に伝わっていたことがうかがえる。

 918、米疾病対策センター(CDC)は、新型コロナウイルスの検査に関する指針を改訂し、「感染者に接触した全ての人は検査が必要だ」とした。8月末には「症状がなければ検査は必要ない」と変更したばかりだったが、専門家から批判の声が相次ぎ、1カ月足らずで撤回した。米メディアは、検査を絞り込むような指針の変更は、政治判断で行われたと報道している。

新たな指針では、感染が確認された人と約1.8メートルより近い距離で少なくとも15分過ごしたような濃厚接触者は症状がなくても、検査を受ける必要がある。CDCは、「無症状や、症状が出る前の人からのウイルス感染が重要なため」、再改訂したと説明している。トランプ大統領は以前から「感染者が多いのは、検査が多すぎるからだ」と不満を示している。

また、ニューヨーク・タイムズによると、8月の検査指針の変更は、科学的な検証をする通常の手続きを経ずに作られ、科学者らが反対したにもかかわらず、ホームページで発表されたという。11月の大統領選を前に、新型コロナの対策状況をよく見せたいトランプ氏は、他にも楽観論を展開している。18日は開発中のワクチンについて、「年内に1億回分が製造され、来年4月までに全ての米国人に接種するために十分な量が確保できる」と発言。CDCのレッドフィールド所長らは、全員に行き渡るのは来年のもっと遅い時期になるとしており、見解が異なっている。