続、完璧主義者の庭仕事――コツコツ、たんたん | くじら座のタウ

くじら座のタウ

ここは城本朔夜が運営するブログです。主に活動情報をお知らせしています。

くじら座のタウ
 

先日、ある知り合いにこんなことを言われた。
「城本さん(ここは本名が入る)が前に言っていたでしょう。庭への取り組み方のこと。あれ、いいなってつくづく思うの。私の座右の銘になってるんだから」
庭への取り組み? ああそういえば。
数年前にミクシィの日記に書いたことかな? 〇〇さんは私のミクシィ日記を見ているはずはないけど、そういえば、どこかでそれに似たこと話したことがあったな。
そうして私は思い出した。数年前にミクシィに書いた日記のことを。


その日記は、以下のようなものであった。

〇月△日
北海道に移住する時の夢のひとつが、広い庭で土いじりをするということでした。
念願叶って、広い庭と、小さいマイホームを手に入れることが出来たのが、〇年前。
予算の関係上、火山灰だらけの更地の庭に少しずつ黒土を買いながら、一輪車でコツコツと土を運び、その辺に落ちている石を積み上げてテラスを作り……この家に引っ越してきた当初、もくもくと作業を続ける私の頭の中には、素晴らしいイングリッシュガーデンが出来上がっていました。
苗を買うのはお金がかかるので、色んな花を種から育て、庭に植え、子供が昼寝をするやいなや、庭に飛び出す。一時期の私は、子育てと庭造りの二本立て。
それは、それはもう、すごい気持ちの入りようでした。

どうにか庭の基本形が出来た後は、草取り人生。雑草の多さには辟易しながらも、それでも黙々と草取りに励んでいました。

ところが、二年前。
文章を書くことに目覚めてしまった私は、庭のことが気になりつつも、それどころではなくなってしまいました。

いや、ある意味、草むしりの虚しさから逃げたかったのかもしれません。
何しろすごいのです。草の再生能力は。
毎日やってもなかなか取り終えない(結構広いのです!)。それでも順々にやり終えていって、さあ、綺麗になった? と思ったら、もう最初に草をとった場所にぼうぼうと草が生えているのです。
それは、まさにいたちごっこ。
きっと誰だって嫌になります。
あんなに頑張った時間は何だったのだ!と思うことしきり。

ところで、完璧主義者の部屋というのは、意外と汚いという説を知っていますか?
完璧主義者というのは、掃除をするからには、完璧に綺麗でないと価値がないと思ってしまい、中途半端な状態を許せないからだそうです。完璧に掃除をするのには、エネルギーがたくさん要ります。毎日なんて出来るうちはいいけれど……疲れてしまいますよね。
そんなこんなで、結局掃除は全くしない→部屋は汚い。

かくいう私も完璧主義者(らしい。最近気づいた)
執筆を理由に庭仕事をサボっている間に、庭はみるみるうちにジャングルと化し……
思い描いていたイングリッシュガーデンのイメージはガラガラと崩れ……
あんなに庭仕事が好きだった私は、嘘のように庭仕事をしなくなってしまいました。
中途半端に草むしりをしたって、どうせ数日後には、同じ場所に元通りのように草が生えるのです。理想の庭になんか近づけないのです。

どうせ理想どおりにならないのなら、やるだけ損だ。
多分そう思ったのです。
見てみないふり。去年の夏は、夏という季節自体が、庭に関して重苦しかった。
嗚呼、早く雪が降ってこの酷いジャングルを覆い隠しておくれでないかい?
そんなことも心に浮かびました。
酷い庭を誰かに見られた日には、「あの、私、小説書き始めたんですよね。そっちが一生懸命すぎて、いやー、庭の仕事をする暇がなくって~」と聞かれてもいないのに言い訳したくなる気持ちに駆られました。

そのうちに私の胸のうちには
私は熱しやすく飽きやすい人間。やっぱり、そのうちに小説も、庭に傾けた情熱が冷めてしまったみたいに、終わる日がくるのか?

そんな悪魔にでも宣告されたみたいな気持ちになって。

今年の庭も確かに酷いです。
だけど、去年の私とは一味違う。
おととい、昨日、今日と、草をむしりながら考えたのです。
この広い庭を美しく変えてやろうと思っては、絶対に駄目だ。
土をいじりたいという気持ちだけに、フォーカスするんだ。
今日草をむしった場所には、またもとの木阿弥のように草が生えてくるだろう。
だけど、それは無駄なことなんかじゃない。
自分が、「楽しんで」土をいじる時間が持てたという事実は、消えないのだから。
                                   (以下省略)
* * * * * * * * *

そして、上の日記を書いてから数年が経った。
今年の庭は、今までの庭とはわけが違う。一段、いや二段くらいはグレードアップした感がある。
その勝因は、知り合いの方に座右の銘にしていただいた「庭をいじりたいという気持ちだけにフォーカスする」という方針。今年はそれが徹底していたことにある。
前の週に草をむしった一週間後には、また元の木阿弥のように草が生えるが、そのことを「あーあ、またか」と思わず、今年はとにかく「楽しんで」やった。
「めんどくさいな」「暑いよな~」そんな気持ちが日によってはあがってくるが、そこは、えいやと飛び越える。一旦庭に出てしまえたなら、こっちのものだ。一日のうち、一時間でもいいのだ。仕事がない日は欠かさず続けた。
たんたんとしたその積み重ねが、結果としてただ表れているのが今年の庭だ。
この分であと二年、コツコツ手入れを続けていけば、夢のガーデンが出来上がるかも☆
そんな予感がこの庭の創生以来、初めて湧いた。

今年は成功。でも来年は?
たまたま今年はうまくいったの?
そうではない、と個人的には思っている。
それは、自分の中になぜなのかよくわからないけれど「抜けた」感があるからだ。
コツコツ、たんたん。
これは、簡単なようだが、殊に完璧主義な人間にとっては難しい。
だからこそ、毎年毎年、座右の銘にしていながらも挫折していた。
ある年は、暑さに負けた。
ある年は、怠け心に火が付いた。
そして、一度くじけてしまえば、完璧主義の人間の特性で、ガラガラと崩れる。もう一度立て直し、やり直すことができない。

抜けた感があるのは、そんな挫折を繰り返す中で、自分の心の危機的状況が事前に見えるようになったからだ。コツを見つけたと言っていい。
そして、この「抜けた感」がとにかく嬉しい今の私だ。
庭のグレードと共に、何だか自分もグレードアップした気がしてくる。
コツコツ、たんたん。
これがしっかりと身についたなら、庭に限らず、人間結構色々なことができるようになる。
人間の作った素晴らしい仕事の基本には全て「コツコツ」「たんたん」があるのだと思う。

今はとにかく、二年後の庭が楽しみだ。
そして、「コツコツ」「たんたん」を使って新しい作品を書いていきたい。


くじら座のタウ

                      各種アゲハチョウがたくさん飛来します。


くじら座のタウ

                      珍しく見つけたカエル。かわいい!