中小企業退職共済掛金については、使用人

(使用人兼務役員可)の退職金を掛金に応じ

て国が確実に支給するために設けた制度であ

り、解約時(退職時)の振込口座は使用人名

義の口座となっている。

 

 法人税法上掛金は全額損金となるが、役員

は加入できないこととなっているので、次の

ような中退共掛金の過大計上額という税務上

の問題が発生する。

 

A 元々従業員であり、中退共の掛金を掛け

ていたが、途中役員になったにもかかわら

ず、使用人でなくなった旨を届出るのを失念

し、中退共掛金を継続していた。

B 代表取締役の妻で役員でありかつ株式を

5%超持っているので使用人兼務役員になれ

ないにもかかわらず、使用人であるとして中

退共に加入していた。

 

(中退共に対する基本的な考え方)

1 中退共掛金を誤納してしまっており、法

人は中退共に対して誤納還付請求権を有して

いることから、掛金を返還してもらう処理を行う。

 誤納掛金の合計額1000(うち除斥期間5年間分

300)

①     (会計上)*中退共が全額返還する旨伝え

られていない場合

未収金1000/雑収入1000

(税務上)

減算 雑収入の過大計上(その他流出)700 

*時効分は雑収入計上する必要がない

…差引300

②     税務上だけで処理する場合

加算 雑収入の計上漏れ(未収金)1000

減算 加算分雑収入のうち時効加算分の過大額 

700 *時効分は雑収入計上する必要がない

                        

  …差引300

③     中退共が返還する金額の通知が合った場合

 1000

(会計上)

    未収金/雑収入 1000

   (税務上)

    なし    *中退共が時効の援用をし

なかったということ

2 中退共の掛金には、国の補助金が入っている

ことや利回りが良いことから脱退したことにし

て、役員が個人で退職金相当額をもらいたい旨

申し出ている場合

(役員退職金の考え方)

 役員退職金については、株主総会等での議決が

なければ支給できないことから、中退共を脱退

(退職)したことで、役員の預金口座に預入され

る退職金は法人が回収し、その後株主総会等を

経て支給されるものである、

役員口座入金額予定額 900

(会計上)未収金900/雑収入900 (役員からの未収金)

役員口座入金済額 900

(会計上)現金900/雑収入900

注)使用人を退職していないにもかかわらず上述した

処理を行わない場合には、中退共に対して虚偽の退職届

を出していることから、事実を仮装したと認められるの

で、役員賞与として重加算税の対象になる可能性が高い。