前回の絵本は

Mさん・作 くじら・絵「ゾウガメのいかり」でした

 

今回の絵本も

Mさん・作 くじら・絵「ゆりかご」です

 

ゾウガメと同じ作者とは思えないほど

作風が違います

 

初めて「ゆりかご」を読んだとき

なんて優しい話だろうと感動しました

 

発想にやられたと思いました

何で私は思いつかなかったんだろう

 

あっ でも 思うのはそこまでで 

私の中では嫉妬の感情が薄いのです

 

それよりもこのお話の絵が描けることが

嬉しくてワクワクしていました

 

 

 

 

〈ゆりかご〉

 

 

 

 

ある春の日 うさぎの あかちゃんが 生まれました

おかあさんは じょうぶな草をあんで 小さなゆりかごを作りました

ゆりかごには 木の実で作ったすずが ひとつついていました

 

あかちゃんは あたたかい日ざしを あびてねむり

目がさめると 木の実が トララ トララと

なるのをきいて わらいました

 

 

 

 

うさぎの あかちゃんは すくすくと大きくなって

ゆりかごから 出たり入ったり 手で木の実をたたいて

トムトムタムと 音をたてたり できるようになりました

 

そのうち ゆりかごに入れないくらい大きくなって

のはらを一日中走りまわるようになりました

 

やがて おかあさんは 子うさぎをつれて ひっこしていきました

のこされた ゆりかごは のはらで ひっそりと風にふかれていました

 

 

 

 

 

そこへ たぬきの子が とおりかかり ゆりかごを見つけました

「すてきなかごねえ! お花をいっぱいつんで おばあちゃんに

とどけて あげようっと」

たぬきの子は きんぽうげや すみれや たんぽぽを

かごから あふれるまで たくさんつみました

 

そのとき きゅうにつよい風が ふいてきて 

かごは空たかく まいあがりました

花は くるくるまわりながら空に ちらばりました

「きれい! お花が風にのってる!」

たぬきの子は むちゅうで花のあとを おいかけていきました

 

 

 

 

 

ゆりかごは じめんにおちて ころがり 

かしの木のねもとで 下むきになって とまりました

 

それから 長いあいだ なにごとも おこりませんでした

そのままかごは 風のこえに 耳をすましてでもいるように

じっとしていました

 

 

 

 

 

 

つぎの春 のねずみが ゆりかごを みつけました

「おっ ちょっといい いえだぞ」

のねずみは けっこんしたばかりの おくさんをよんでくると

ゆりかごを 見せました

 

「げんかんは ここがいいよ 

すてきな木のすずが ぶらさがっている」

おくさんは すずをコロンカランとならしてみて

その いえが とても気にいりました

 

そして あんしんして 子どもを たくさん生みました

まもなく せまい いえのなかは 春生まれの子どもたち

夏生まれの子供たち 秋に生まれた あかちゃんたちで

すぐ いっぱいに なってしまいました

 

 

 

 

 

 

「これじゃ 冬がこせないな 

ひろくてあたたかな いえを さがしにいこう」

 

と のねずみは いって たくさんの かぞくをつれて

ゆりかごの いえを 出ていきました

 

 

 

 

 

 

ゆりかごは ながい冬のあいだ ゆきに 

うもれて じっとしていました

 

春がきて ゆきがとけると ゆりかごも すがたをあらわし 

気もちのいい かぜにふかれて 

木の実が コロコロと なりました

 

きつねのぼうやが その音を聞きつけて 近づいてきました

「なんだろう これは」

きつねは ゆりかごを あたまにかぶってみました

「ぼうしかな」

きつねが 走ると 木の実が たのしそうに

カラコロと なりました

 

そのとき 足もとから 小鳥が ばさばさっと とびたったので

きつねは おどろいて ひっくりかえりました

 

それから きつねは あたまからかごが 

おちたのにも 気がつかず

小鳥をつかまえようと 走っていってしまいました

 

 

 

 

 

 

ゆりかごは 木のえだに ひっかかって ぶらさがっていました

 

いたちのきょうだいが やってきて それを 

かわるがわる ブランコにして あそびました

「もっともっと つよくこいでごらん

カッコンタランと いい音がするよ」

 

ふたりは このブランコが とても気にいって

夏のあいだ まいにち あそんだので

とうとう とってがぶつりと きれてしまいました

 

 

 

 

 

いたちのおかあさんが 秋になってから そのかごに

りんごを たくさん入れて いちばへ 持っていきました

 

いちばには りすが あつめたくるみや 

にわとりが つくった はねかざりや

小鳥が つんできた 木いちごなどが うられていました

 

そこへ おなかの大きな うさぎのおくさんが

とおりかかり りんごのかごに 目をとめると

それを ふしぎそうに じっとみつめました

 

 

 

 

 

 

「りんごは いかが」

いたちの おかあさんが いいました

「ごめんなさい わたし りんごじゃなくて

そのかごを 見てたんです」

うさぎの おくさんが こたえました

 

「これを見てると むねの中に とってもあたたかい 

なつかしいものが ひろがっていくの この中で 

気もちよく ねむってしまいたくなるような」

 

「このかごは 子どもたちが見つけて 

ブランコにして あそんでいた ものなんですよ」

 

そのとき 風が吹いてきて 

ゆりかごの木の実が コロコロとなりました

 

「あっ この音 おかあさんがつくった 

木の実のすずと おなじ音だわ

いたちさん このかごは ははが わたしのために

つくってくれた ゆりかごです」

 

「まあ! そうだったんですか じゃあ 

りんごが ぜんぶ売れたら かごは あなたにさしあげましょう」

といたちの おかあさんが いいました

 

 

 

 

 

うさぎの おくさんは かごをもらって かえると

ちぎれたとってを リボンでむすんで まどの下に

たいせつに おきました

かごから りんごのかおりが かすかにしました

 

おくさんは 大きなおなかを なでながら 

もうすぐ生まれてくる あかちゃんに そっとはなしかけました

 

「あなたの おばあちゃんがつくってくれた ゆりかご

しあわせを いっぱいのせて かえってきたのよ」

 

さわやかな 風がふいてきて まどべに つるした

木の実のすずと ゆりかごの木の実のすずが

タラントン タラントンと

よびあうように なりました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このお話の 良さを活かしたくて

どう描いたら良いか考えました

 

時の流れは 

草で編んだ「ゆりかご」を冒頭の緑色から

徐々に 茶色に 最後は少し壊れかけに…

 

季節の移り変わり たくさんの動物たち

 

市場の場面では登場した動物たちを

集めました

 

最後のページでは

生まれた赤ちゃんと

(壊れた取手はリボンで)

ゆりかごの底は 新しい緑の草で

修理してあるのを 見つけてもらえましたか?

 

こんな小さな事を 入れ込むのは ワクワクします

悪戯を思いついた 小3 男子 みたいですね

 

楽し過ぎて 最後のページを書き終わるのが

とても寂しかったのを覚えています

 

 

どの絵本も 完成間近になると

もう二度とこの世界に 戻れないんだなあと思い  

達成感とともに 寂しくもなるのです

 

 

 

 

 

最後まで読んでいただき

ありがとうございました