最初に手にしたのは、シリーズ第1作、『水鏡推理』だった。

 
澤田翔馬という文部科学省一般職がキャリアに引き連れられ、東北大震災の被災地に向かい、そこの仮設村に居座る男へ文科省を代表して謝罪に行く場面から始まる。
 
以後、このイケメンながら頼りない青年が語り部となり、物語が進行する。
 
殺人のない推理小説。
確かに人の死なないミステリーは、有り難い。
ハードボイルドやミステリーが好きなものの、暴力や殺人、サイコにはいささか辟易し、明るいコメディに走るこの頃。
陰惨なもの、重たいもの、陰湿な物語はいらない。
 
かと言って、
明るくノン天気で、気楽過ぎるお話もいらない。
 
そんな気分の中で手に取った『水鏡推理』は、どんぴしゃ、一瞬で、虜になった。
 
文科省の事務官だが、キャリアではない。
大学も東大でもなく、有名私立でもない。
とんでもない美人ではあるが、財閥のお嬢様でもない。
 
いわば、ごく普通の女性が主役。
ただ一つ違ったのは、彼女は大学時代に探偵事務所でアルバイトをし、国家公務員試験では判断推理と数的推理が満点だったという推理の天才だったこと。
 
最初の場面は、福島の被災地にある仮設住宅地での出会い。
 
孤立した仮設住宅から頑固に移動を拒否する男性を訪問する場面。
 
マスコミも注目する立てこもり男性の欺瞞を暴く水鏡瑞希。
 
その痛快な種明かしは直接、ご自分で確かめて下さい。
 
この一冊に感心して私は、次々にシリーズを読破していきます。
 
いま発行されている文庫本は、「水鏡推理VIクロノスタシス」まで。
 
一気に一週間うちに読んでしまい、今は同じ作者の他のシリーズに浮気している。
 
どの巻もとても楽しめたけど、なぜか印象深かった作品がシリーズ第四弾の「水鏡推理IVアノマリー」。
文庫本の帯コピーを転載すると、
 
「最高に面白く珍しい気象と登山のミステリ」
 
とある。
 
はじめ、
 
15歳の少女四人の登山の場面から始まり、なかなか水鏡も文科省キャリアが登場しない焦らしが良かったかもな。
 
ぜひ、本屋で立ち読みして、
どれかを買ってみて下さい。幸福になります。