【原神】続・ver5.1実装予定のシロネンについて【女豹・DJ】 | 久印のゲーム雑考

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現在はHoYoVerseの『原神』を中心に扱っています。

オープンワールドRPG『原神』も8月末に ver5.0 アップデートで第6の国「ナタ Natlan」が実装されてからすでに1カ月が経ち、9月27日には次の ver5.1 公式予告番組も行われました。

リリースから4周年記念ということもあり、多くの出演声優のお祝いメッセージも放映して(というかそれが大半で)2時間近くに及ぶボリュームの番組となりました。

 

Vet5.1 のPVも来ています。

 

……なお、下記記事で書いた、「残るナタの3部族の土地と竜は ver5.1 ではまだ実装されないのではないか」という予想は的中してしまいました。

 

Ver2.0で稲妻が実装されて以来、新しい国の実装に続く「.1」のバージョンではその国のマップが追加拡張されるのが常でしたが、ver5.1にして状況が変わりました。Ver1.1 以来の「.1」でマップ追加無しです。

 


 

が、やはり最大の注目は、唯一の真キャラクターのシロネンでしょう。

Ver5.0 アップデート直後に書いた上記の記事ではまだ情報が少なかった(ムアラニやカチーナ、キィニチと違ってPVの出番もわずか)ということもあり、この機会に追加情報をあらためてまとめてみようかと思います。

 

まず判明済情報の復習になりますが、シロネンは「こだまの子(ナナツカヤン)」の鍛冶師。「こだまの子」は「テペトル竜」という、地面に潜り壁面を登ることができる竜をパートナーとして生活している部族です。

 

さらに、これは ver5.0 のストーリー中で判明した情報なので若干のネタバレを含みますが、シロネンは選ばれし英雄の古名を受け継ぐ者でもあり、すでにその使命に目覚めているとのこと。英雄は6つの部族に一人ずつ、つまりシロネンは「こだまの子」を代表する戦士ということになります。

ほっつき歩いていて捕まらない、木の上で昼寝をしている、よほどズボラなのか生命力の強い植物(サボテンのような多肉植物に見えます)ですら枯れさせる……という彼女の人物評も、自分の使命の重さを知った上での生き方だと思うと、見え方が変わってきます。

 


 

続けて能力ですが、こだまの子のカチーナは、「ぐるぐるコマちゃん」というドリルで壁面を登る能力を持っていました。

ではシロネンはというと……ローラースケートで疾走し、やはり壁面を登る能力を持っていました。

(画像は予告番組より)

壁面で静止して優雅に休む姿も。

 

同じ部族のカチーナと元素も同じ岩で、能力も同様のものになっており、ナタのキャラクターはそれぞれ部族のパートナー竜に対応する能力を持っていることを強く印象づけることになりました。

 

※ ただ、だからといってすべての「神の目」を持つナタ人が部族に対応した元素の神の目でないことは、アテアというNPCが炎元素の神の目を持っていたことで判明しました(そのことはこちらの記事で少し触れました)。

これはやはり、「作中での設定」と「ゲームの仕様と演出」を分けて考えるべきでしょう。

おそらく設定としては、それぞれの人のあり方に沿って、7種類の神の目のいずれも授かる可能性があるのでしょうが、ゲームシステム上プレイアブル化するキャラクターは部族との元素の対応を強調している感があります。

 

さらに気になる描写もあります。走りながら、

猫っぽい姿勢でジャンプして――

一瞬、完全に四本足のネコ科動物形態に変身します。

 

PVでも同様の場面がありました。大型ネコ科動物らしいフォルムをよく捉えています。

(Ver5.1公式PVより)

 

10月4日公開のチュートリアル動画(ナレーションCV: 津田健次郎)では、元素スキルによる「自身の移動と壁登り速度をアップさせ、オセロット形態で壁面を高速跳躍できる」との説明がありました。スキルを用いての壁面移動中にジャンプを使うとこうなるようです。

 

『原神』には獣耳や尻尾のあるキャラクターはちょくちょく出てきますけれど、完全に動物形態に変身するのは綺良々(きらら)くらいのものです。

綺良々は猫又、つまりそもそも猫が人型に化ける妖怪なので、スキルにより(箱に入った)猫本来の姿に変身します。

 

稲妻には他にも人型に化ける獣の妖怪がいて、八重神子も仙狐――つまり本来は狐ですが、本来の姿を見せてくれることはありません。

(そもそも、日本語の「化け物」とは元々、タヌキが人間に化けるなど姿を変えるからそういうわけです。一つ目小僧のように元々異様な姿で特に変身はしないものを「化け物」と呼ぶのは転じての用法です)

 

そもそも、ナキウサギのカチーナに続き「こだまの子」のプレイアブルキャラクターは2人とも獣人でしたが、他の「こだまの子」のNPCたちはいずれも普通の人間の姿です。
『原神』の世界では隔世遺伝で、普通の人間の両親から獣耳や尻尾のある子供が生まれることがあるのは判明していますけれど、彼らはあくまでそのような特徴のある人。獣が人間に化けているのではなく、人間で完全に獣の姿に変身するならばかなり異例です。
シロネンはよほど獣の血が濃いのか、それともそもそも人間の生まれではないものが部族に受け入れられているのか……

あるいは、上の映像に見る「オセロット形態」は切子細工の宝石かポリゴンのようにカクカクした面で構成されているので、これも鉱石加工の技術による能力なのかもしれません。

 


 

一方、戦闘能力はというと、やはり職業である「鍛冶」を扱うのかと思いきや、そうではありませんでした。

おそらく元素爆発のカットインアニメーションかと思われますが、レコード台を前にして演奏している映像が入りました。

DJです。

 

PVではさらに、ステージに立っているような姿も見られます。

 

予告番組での説明によれば、耳につけている青い三角形も専用のヘッドフォンとのこと。

 

戦闘能力にもこの音楽要素が反映されており、ナタのキャラクターに共通する「夜魂値」ゲージにも3つの三角形がくっついたデザインですが、これは音源の「サンプラー」と呼ばれています(詳細な性能は後述)。

 

まあ実際、ナタには音楽CDやダンスもしばしば出てきます。

特に、「こだまの子」という部族にはストリートダンス風のダンスステージがあり、このダンスの動きはカチーナの待機モーションにも取り入れられています。

 

さらに、この部族の族長もアフロにサングラスのまるでヒップホッパーのような外見。

シロネンはこの方面が強く出たキャラ造形となりました。服装も現代のアメリカンギャルのイメージなので納得ですね。

 

これがファンタジーならではのところで、モデルとなる時代を厳しく限定しなくとも、ネイティブアメリカンの文化をモチーフにしつつ、現代アメリカ文化を取り入れていくこともできます。古今の取り合わせに作り手のセンスも出ます。

 

ちなみに、日本をモデルとした国「稲妻」でも、ベースは幕府の統治する江戸時代ですが、どう見てもライトノベルの「娯楽小説」が出版されて人気を博しているという現代的な要素もあり、ver2.6 では新刊や同人誌の即売会にサイン会――つまりはコミケをモデルとしたイベントが開催されました。

「小説家になろう」小説風の『雷電将軍に転生したら、天下無敵になった』なんて作品まであり、伝説任務では雷電将軍本人にこれを読ませることすらできます。

 


 

このブログの目玉の一つはやはり言語からの考察。

この『原神』というゲームではキャラクターの各スキルについてそれぞれ名前がついていますので、それを見て行きましょう(以下、英語表記は HoYoLAB の公式投稿より)

 

まず、通常攻撃は「エエカトル・ロアー Ehecatl's Roar」

「エエカトル Ehecatl」はナワトル語で「息吹」「風」あるいは「霊」のことで、Roar は英語で「吠え声」ですから、文字通りには「風のうなり」です。

ギリシア語のプネウマ(πνεῦμα)、ヘブライ語のルーアハ(רוח)と、「風」や「息」を意味する言葉が「魂」や「霊」を指すというのは複数の文化圏で見られる現象で、これがナワ語圏にも見られるなら興味深いことですが、この場合あまり霊的なものは関係ないかもしれません。あくまで剣を振るう通常攻撃ですし。

 

元素スキルは「ヨワル・スクラッチ Yohual's Scratch」

ナワトル語で Yohua は「暗くなる、夜になる」の意で、Yohualli ならば「夜」です。Scratch は英語で「引っかく」ことです。

 

元素爆発は「オセロット・キューポイント Ocelotlicue Point!」で、これは英語表記と日本語表記で単語の切れ目が違って、日本語では「キューポイント cue point」を語として強調した形になっています。動画内の特定の時点を示すマーカーを意味する cue point との掛詞なのかもしれませんが。

オセロットという動物名がナワトル語に由来するものであり、現在の生物学的分類での「オセロット」のみならずジャガーなど同様の模様のネコ科動物全般を指していたということは、以前のシロネンについての記事ですでに触れた通りです。

 

すべて「ナワトル語+英語」で、しかも上の二つは「うなり」「引っかき」と、いかにもネコ科動物らしい野性的な動作です。ネコ科動物は夜行性ですし、「風」も疾走のイメージなので、キャラクターイメージとの合致も明快。

英語版表記は他言語+英語になっていることは『原神』ではよくあるのですが、3つともというのは結構珍しく、ことさらにナワトル語の強調が目立ちます。

 


 

それから、ゲームプレイでの性能面についても触れておきましょうか。

上で見た通り、スキルのゲージについている三つの「サンプラー」がデフォルトでは岩元素で、岩元素と「結晶」反応を起こせる四元素(炎・雷・水・氷)のキャラクターを一緒に編成すると対応元素に変わります(『原神』は4人パーティーなので、他の元素のキャラクターはシロネン以外の3人で3種類が最大)。

 

そして、サンプラーの該当する元素について敵の耐性を下げる能力があります。

 

それに加えて、ナタ出身のキャラクターは元素反応を起こすと、聖遺物「英雄の絵巻」で反応に関わった元素のダメージバフ40%を味方全体に配ることが可能。聖遺物はこれで決まりでしょう。

 

敵の耐性を下げる手段というのは多くはありませんが、有名だったのが初期からある聖遺物「翠緑の影」の効果で、風元素による「拡散」を起こすと、拡散させた元素について敵の耐性を下げられました。

さらに、風元素キャラクターの楓原万葉は拡散させた元素のダメージバフをも味方に配ることができたので、バッファーとデバッファーを兼ねる強力なキャラクターの一人でした。

 

一方、風元素で「拡散」できる元素と岩元素で「結晶」化できる元素は同じですが、拡散はダメージを出せるのに対して、結晶はそうではない、あくまでシールドを生成してダメージを一定量防ぐだけ、という違いはあります。

しかし他方で、聖遺物「翠緑の影」の効果も楓原万葉の固有天賦も「拡散させた元素」に関して敵へのデバフや味方へのバフを与えるだけで、風元素ダメージそのものには影響がなかったのに対して、「英雄の絵巻」の効果は「反応に関わった元素」つまり岩元素をも対象にする、というのが重要です。シロネンの能力も、サンプラーを岩元素のまま使うことも可能と明言されています。

つまり、結晶化の対象となる四元素と岩元素のいずれにとってもバフ・デバフを与えられるサポーターとなるわけで、これはすごいことです。

 

さらなるポイントとして、シロネンの元素爆発は味方のHP回復。ヒーラーの役割まで兼ねます。

 

ただ注意点は、サンプラーを岩以外の元素に変化させて維持する(敵の耐性低下を維持する)にも、回復を発動するにも、「二つの以上のサンプル音源を他元素に変化させる」のが条件となっていることですね。ですから、結晶反応の対象となる四元素のキャラクターを2人以上編成に入れる必要があります。

 

装備品については、聖遺物は上記の「英雄の絵巻」4セットで決まり。

また、敵の耐性低下の効果量に関しては特に本人のステータスに依存するような記述がないので、だとするとサポーターとして最低限欲しいステータスは元素爆発を使いやすくするための「元素チャージ効率」くらいということになります(回復量が何に依存するのか事前情報では明記がありませんが、そもそもこのゲームでヒーラーの回復量に不足を感じることはあまりありません)。

もしくは、どうせ特別にサポートのためのステータスが必要でないのなら、自身の火力も出せるビルドにするというのもありです。主なスキルのダメージは攻撃力ではなく防御力依存ですので、防御とダメージバフ・会心系がダメージを出すための基本です。

 

武器についても、星5新キャラの常として最適化された限定武器が同時実装されますが、その他にもっと入手しやすい星4武器でも、たとえばちょうどナタで実装された鍛造片手剣「エズピツァルの笛」が防御力の上がる武器ですので、これもありでしょう。

 


 

【公式動画】

エピソード動画。「名鋳り」とは「古名」を作ること。このとりわけ重大な厳粛な彼女の仕事が前に出た動画となっています。

 

↓ こちらの動画では未実装とのチャスカの戦闘シーンもさらっと入って、共闘する場面が描かれます。

 

ダインスレイヴ(CV: 津田健次郎)のナレーションによる使い方チュートリアル動画。

 


 

【文献案内】