第4回 進行
内視鏡検査後、二週間おきに通院していたが、投薬療法では一向に改善せず、症状は徐々に悪化していった。
夜中の逆流もほぼ毎晩の様に起こり、喉や鼻腔(1)が胃酸にやられ熟睡出来ぬ日々。
逆流とは、飲食時に頑なに閉ざしていた噴門(2)が、就寝中になるとユルユルと開いてしまい、まだ小腸に行かず胃の中に残っている内容物がポロロッカの如く逆戻りしてしまう現象。
当時はもう慣れて(?)いたので、辛いことは辛いのだが、然程気にしてはいなかった。
だがこれは結構危険な状態ではある。
酷い時は、肺炎を起こす可能性もあるし、酔っていたりすると最悪の場合には窒息死も有り得るのだ。
そしてこの症状の弊害が、私はアトピー性皮膚炎なので、毎食後治療薬を服用していたが、夜中の逆流で薬を吐き出してしまっていたのと、十分な栄養を補給出来ないために炎症の治りが悪くなっていた。
更に服が擦れる所が、広範囲にわたり軽い擦過症の様な状態になっていたので、常に微熱を発し寒気を感じて、体を小刻みに震わせる事も頻繁にあった。
私がお酒好きなのは周りの人は知っていたので、「アル中じゃないのか?」と思われやしないかと、いつも人目を気にしていた。
特に酷くなっていた右腿の裏側は、体液がスーツのパンツに付き、汗染みの様になっていたので、日にガーゼを二度も三度も替え、なるべく汚れない様に対処していた。
またアカラシア特有?の胸痛の頻度も多くなっていった。
この胸痛、人によって痛みの感じ方はそれぞれだと思うが、私の場合は”胸を開いて、痛みを感じる箇所を直接手で掴み、マッサージをしたいくらい”の痛みだった。
もちろんそんな事は不可能なので、胸を摩るか鳩尾の辺りを指で押して紛らわせるしか無かった。
痛みは朝方、特に通勤時に起きる事が多かった。
胸を摩りながら早く収まれと祈りつつ、満員電車の中冷や汗を流しながら耐える日々。
でも、痛みが続く時間は長くても一時間程度だったので、会社に着く前には治まってくれていたのが、幸いだったかな。
ただ、一度だけ会社まであと1駅くらい前まで来たのに、どうにも耐えられずに下車。
暫くホームのベンチで休んでいたが回復せず、とても仕事が出来る状態ではなかったので、会社に体調不良の旨を告げ、家まで引き返したことが有る。
つづく
(※10年以上の前の記憶を辿って書いているので、一部記憶違いが有るかも知れません)
脚注
(1)鼻腔
(2)噴門
参考サイト:東京慈恵会医科大学 外科学講座(アカラシア)