まさかの大雪のバレンタイン。
それでも仕事はやらないといけない。
夜までかかって、やっとお得意先回りは終わった。
交通機関は麻痺してる。
「どうしよう」
溜め息を吐く私に、
「なんか予定あるんすか?」
なんか刺のある言い方。実際に無いけど少し拗ねてみた。
「別に...無いけど。」
「だったら、少し休んで行きませんか?」
「なんで?」
「俺が幸せなんですよ。」
「え?」
少し顔を赤らめながら、照れ臭そうにしている。
慌てて何か差し出した。
「と、とりあえずこれでも飲んで温まりましょうよ。」
「ありがとう。」
少し前に買ったみたいで、温くなり始めていた。受け取ってすぐに、失笑。
「それ、ココアじゃないですよ。」
そう、ココアの文字の上に、綺麗とは言えない字が書かれた紙が、セロファンで留められていた。
「解った。今日が初めて記念日だよ。」
バレンタインデーとココア。彼にとって大切な日だったんだ。
私にも...特別な日に。