2月14日。バレンタインデー。
 
 去年までの俺なら、世間の独り身同様、きっと
 
 「バレンタインくたばれ!」
 
 なんて不貞腐れていたんだろうなぁ。
 
 片思いだけど、その考えが変わった。
 
 好きな人が出来た。
 
 学校の先輩で幼馴染で。
 
 今までは、俺のエロ妄想の対象だったのに、「好き」の気持ちは、どうしても妄想より勝ってしまうようになった。
 
 近所の公園、よく遊んだブランコに呼び出しておいて、彼女を待った。
 
 いつもは地味な格好。黒髪で眼鏡を掛け、地味な色のコートを制服の上から着ている。
 
 しばらくしてやってきた彼女は、俺のエロ妄想120%増しか?と思うほど、いつもと違った。
 
 眼鏡を外し、制服(ブレザー)の上には春を思わせる、桜色のコートとマフラー。長かった髪は、ばっさりカットして肩くらいになっていた。
 
 可愛い...そんな風に言いそうになった。それを堪えていたのと、その可愛らしさにのぼせたのか、体が熱くなっていた。
 
 「大丈夫?顔赤いよ?風邪でも引いたんじゃない?」
 
 「大丈夫だよ。」
 
 精一杯の強がり。
 
 「あ、これ。バレンタインのチョコ。食べてね。」
 
 こんなに嬉しい事ないのに、結局素直になれなかった。
 
 「いや、いいよ。これ、最近甘いの喰わなくなったからやるよ。」
 
 「そう...」
 
 哀しそうな顔をしていた。当然だよ。たとえ義理でも、あげた人からいらないなんて言われたら。
 
 
 
 お互い切ない気持ちになりながら帰った。...家が隣だから、最後まで同じ道を一緒に帰った。
 
 
 
 夜、素直に伝えられなかった事に自己嫌悪になってた。でも、風呂には入って、上がって来、部屋に入ると、彼女・舞だとすぐ判るメールがあった。
 
 「さっきはごめんね。ありがと。手紙読んだよ。涙がポロポロ落ちてきました。この手紙の返事は...」
 
 
 バレンタインの日、日本じゃ女の子がチョコを贈るのが習慣化してるけど、別に一方じゃなくても良いんだ。
 その神秘の恋の魔法は、男にだって掛けられてんだから。