23-11-09

去る10月17日、神戸の川崎重工で海自の最新鋭潜水艦「らいげい」(雷鯨)が進水式を迎えました。「たいげい型」の4番艦(SS-516 )になります。

海自の潜水艦はほぼ10年単位で型式が変わってきました。1980年代「ゆうしお型」、1990年代「はるしお型」、2000年代「おやしお型」、2010年代「そうりゅう型」、そして2020年代「たいげい型」です。

海自の潜水艦は20年程度の実働期間となっていますので「ゆうしお型」や「はるしお型」はもう写真か模型でしか見ることが出来ません。

その点、呉で「鉄のくじら館」として一般に開放されている「あきしお」は、唯一の「ゆうしお型」(涙滴型)の現物として貴重な存在となっています。

 

海自は現在22隻の潜水艦を保有しています。内訳は「おやしお型」8隻、「そうりゅう型」12隻、「たいげい型」2隻です。年々新艦が就役すると古い艦が退役していきます。長らく親しまれてきた「おやしお型」もやがて見られなくなります。

 

海自の潜水艦は型式が変わる度に新たな技術が導入されてきました。例えば外観形状。「ゆうしお型」「はるしお型」までは「涙滴型」でしたが「おやしお型」以降は「葉巻型」になっています。「鉄のくじら」は「涙滴型」です。

 

「涙滴型」は水中での抵抗を少なくするため後方部分を細く絞り、涙の形にしていますが、絞ることで船体容積が乏しくなる問題があり、後方部を絞らず容積を増加させるようにした結果「葉巻型」と呼ばれる外形になりました。この構造は「たいげい型」にも引き継がれています。

艦尾舵は当初十字型でしたが「そうりゅう型」1番艦以降、X字型になりました。X字型の方が水中性能に優れ、着底しても舵の損傷が少ないという利点があります。

海自潜水艦で最大の新技術導入はリチウムイオン電池の採用でしょう。水中での動力源として従来は鉛蓄電池が使われてきましたが、「そうりゅう型」の11番艦「おうりゅう」以降リチウムイオン電池に代わっています。

 

リチウム電池の方が小型であるうえ、2倍以上の容量を持つので水中航続力が大幅に改善されるし、補助動力装置である「非大気依存推進(AIP)装置」は不要になります。これは画期的な技術の進歩です。

停泊している潜水艦が白煙を吐き出している光景が「アレイからすこじま」の岸壁からも見られますが、リチウム電池だと短時間のエンジン操作で充電完了しますので、これからはあまり見られなくなるかと思います。

 

日本の潜水艦建造技術は世界最高級と言われており、その他にも、潜望鏡のミラーレス化や高性能ミサイル搭載、長魚雷搭載など新技術導入は数多く見られますが、紙数が増えるのでここでは省略します。

 

「らいげい」は全長84m、全幅9.1m。これは「そうりゅう型」と同じですが、深さは若干大きいとのこと。基準排水量も3,000トンとなり海自最大の潜水艦になります。乗員は約70名。女性乗員6人のため専用の居住エリアが設置されています。

 

「らいげい」は今後内装工事や性能試験を実施し、2025年4月に就役します。配備先は未定です。「呉に来てクレ~」と呼びかけておきましょう。

 

  次回は11月12日「浜田省吾の少年時代」です。