22-10-03

あと1年弱に迫った呉市の旧日新製鋼所完全撤退ですが、そのニュースの陰に隠れてあまり大きな話題にならなかったのが、川尻町の「神田造船所」撤退かと思います。

既に、今年1月末に撤退しています。

神田造船所は中堅の造船メーカーとして業界でも高い技術を持っているとの評価でしたが、中国・韓国メーカーとの価格競争激化で赤字が続き、新造事業から撤退を決意、常石造船K.Kに全株式を譲渡しました。

 

神田造船所は昭和44年に川尻の現在地に移転してから、大型フェリーを中心に多くの新造船を建造してきました。フェリー以外では宇部興産のセメント運搬船「興山丸」(14,902トン)などの実績もあります。

新潟と佐渡島を結ぶ「おけさ丸」(5,862トン)(上)や「ときわ丸」(5,380トン)。鹿児島から奄美群島、沖縄那覇を結ぶ「クイーンコーラルプラス」(5,910トン)など全国を神田造船が手掛けた船が活動しています。

瀬戸内海汽船では、レストラン船「銀河」(575トン)(上)や今話題の「シーパセオ」(902トン)(下)などが神田造船の建造になります。

今後は船舶修繕事業のみの会社とし、社名を「神田ドック(株)」として、今年4月に設立済みです。従業員は130名ほど。

 神田ドックの「浮きドック」(上)

 

国内の旅客フェリーは毎年ドックに陸揚げして検査することが義務づけられています(5年に1回の定期検査と毎年の中間検査)。従って、修繕の受注は好調に続くとみられます。

現在、神田ドックには沖縄航路の「クイーンコーラルプラス号」(上)が入渠していて、10月8日までの予定で定期検査を受けています。このフェリーは2008年に神田造船で建造された船です。

 

全長143m、幅22m、航海速力21.4kt。旅客定員470名。積載能力はトラック26台、乗用車44台。他に貨物船としてコンテナ246個を積むことができ、船首には大きなクレーンが備えられています。

 

客室はバス・トイレ付の特等から、雑魚寝の相部屋の2等までひと通り揃っています。1等には1名個室もあり、沖縄航路の中では充実した構成となっています。船内にはレストランや売店、ペットルーム、コインロッカーのほか大浴場があります。

 

フェリー便だと鹿児島港から那覇港まで25時間かかります。料金は2等で15,000円。私は、3度ほど沖縄旅行をしましたが、いづれも広島空港からの飛行機便でした。所要時間は僅か2時間ですが、料金は3万円とフェリーの2倍かかります。