令和2年6月12日(金)

 

先日の中国新聞に「葛原しげる」の記事が出ていました。音戸の瀬戸に彼の歌碑があるナ、と思いながら読んでいくと、少し奇異に感じたので調べてみました。

その結果、音戸の瀬戸に歌碑があるのは、同じ「くずはらしげる」でも「葛原繁」だと分かり納得できました。つまり、”同音異議”の人でした。

「葛原しげる」は福山市出身(上生家)の童謡詩人、「葛原繁」は呉市出身の歌人。似たような名前と職業なので、つい混同してしまいました。「しげる」が明治19年生れ、「繁」が大正8年生れ、だいたい30年のずれがあるようです。

   (毎年行われる「しげる祭り」)

 

「しげる」は童謡詩人として「夕日」「村まつり」などたくさんの童謡を作詞しています。「夕日」は「ギンギンギラギラ夕日が沈む・・・・・、「村まつり」は「どんどんひゃらら、どんひゃらら・・・・」という詩ですから、どなたも良くご存知でしょう。作詞された童謡は総数で4,000編ほどもあるそうです。

「しげる」は学校の校歌もたくさん作詞しています。広陵高校や広大付属福山中・高校など合計すると420校ほどにもなるそうです。

 

また「しげる」はボーイスカウト日本連盟歌「花は薫るよ」の作詞者でもあります。ボーイスカウトの指導者を経験した者として感慨を新たにしました。

「花は薫るよ」は集会や式典の冒頭、全員で唱和した懐かしい歌です。今でもスカウト、リーダーみんなで歌っていると思います。元歌は藤山一郎氏が歌っておられました。

    花は薫るよ 花の香に 陽は輝くよ 陽の光に

    我らに名誉の重きあり 香りか光か ああ名誉

    名誉、名誉、重きぞ名誉 フレッ フレッ フレッ

    スカウト我らの 名誉ゾ 重き

「しげる」は生涯青年の心を持ち続け、子どもたちから「ニコピン先生」として慕われました。

死の直前まで明るく前向きな生き方を示しておられたとのことです。

一方「繁」は東京工業大学校電気工学科出身という異色の肩書をもつ歌人です。昭和13年に「多磨」に入会して、北原白秋に師事したり、宮柊二らと「コスモス」創刊に尽力しています。昭和56年には歌集「玄」で読売文学賞を受賞しています。

音戸の瀬戸にある歌碑は、彼が昭和37年に音戸の瀬戸を訪れた際、詠んだ歌2題が刻まれています。その2題共のちに歌集「玄」に収録されました。

      夕空のもともろもろにしづまれり瀬戸に見さくるにし東の海

      瀬戸いでて落ちあふ潮は夕凪の海にうごきて渦ひろげゆく

意味は何となく分かる気がしますが、詳しくは説明できません。

この歌碑は仲間の歌人たちにより、平成3年に建立されています。

「繁」はまた、電気工学専攻だけあって、実業家としても名を成しています。横浜に本社をもつ総合物流企業「日新運輸倉庫}(現・日新)をおこし、国際物流に力を注いでいます。

葛原繁は呉出身ながら、呉市民にあまり深くは知られていないかと思いますが、これを機会に音戸の瀬戸にある彼の歌碑を訪れてみるのも良いかと思います。