※妄想です。

いぬとねこはにんげんたちがしんぱい。


















ばくばくばくばく

心臓が

心臓がいたい

不整脈じゃないぞ

規則正しく打ち付けてるぞ

強烈アタックだけども!










「おにはーそとー!!」


「そうね、福は内だな」


「にゃんことわんこもうちー!!」


「家に必須だね!」


「しょーちゃんはそとー!!」


「なんでだよっ!?」






…他に言いようがあったんじゃなかろうか。


まあ、ね?

忘れてたけどさ。

綺麗さっぱり。

そんなコトもはや縁のない年齢な気もするし。

いや、もう年齢は関係ないもんなのか。

お祭り大好き日本人として、年間、由来などもう彼方へ放り出されてる行事のなんて多いことが。


記憶としては子供の行事だったような。

いや、無病息災。

邪鬼払いだったか。

ならば年齢は関係ないか。


ガサ


手に下げたビニール袋(有料)が音を立てる。

その中には今日の夕飯となる食品が入っている。

と言ったら身も蓋もない。

我ながら情緒がねぇな。


しかし。

しかしだ。


「もう少し言いようが」


食べたいのはわかる。

作るのもめんどくさいだろう。

その場合、作るのは俺ではない。

よって、発言権はない。


「もーちょっとオブラートにだなー」


節分の太巻きが食べたい。

家にはない。

買ってきてね♡

要はそういうコト。


サイフを渡され、ポイッと放り出されて、思うより外は寒かった。








「ただいまー、…あれ?」


玄関のライトがついてる。

その先のリビングの照明が消えている。

廊下も消えて、何故かテレビだろう光と声だけがついていた。


鬼ごっこ的に全力で豆を投げつけるんじゃないんだ。

いや、その場合の鬼って誰だ。

俺か?

…俺だろうな。

いやまて、まだ鬼のお面ないわ。

そういうのはさすがに無いか?


「まさ」






テレビから放つ光

その反対側に何かが反射している

光の反対は闇


暗い部屋の隅に何か

宙に何か




白い

鬼の顔




「おにはそとーっっ!!」


「んぎゃーっっ!!」












「んで?」


「心臓とまった」


「復旧おめでとう」


「止まったよ!マジで死んだよ!俺は!」


「生還なによりでーす」


「オレ翔ちゃんの悲鳴にビックリした」


「あんなの節分じゃないから!

そんなとこに本気出さなくていいから!!」


「えーだってやるなら怖いほうが良くない?」


「雷様な鬼さんでいいの!

かわいくていいのっっ!」


「そんじゃ面白くないじゃーん」


「まぁコレが宙に浮いてたら、ねぇ」



潤がつつく指先には白い面。

イベント事が好きな弟さえ苦笑する、それ。



帰宅した俺の目に映ったのは

白い面だった。

手書きの子供向けのようなものではない

それは


「般若ってさー。

お前も何処から手に入れたのよ」


「パーティーグッズ売り場に売ってたよ?」



プラスチックのそれは、本物よりピカピカしてよく光を反射した。

驚愕で動けない俺の前で、般若の面は不規則に揺れて、それがまたコワイ。


そして


鬼は外と叫び声と共に背後から強烈なツブテが全力で投げつけられた。




「あのさ、まー」


「うん?潤ちゃんも豆投げた?」


「投げない。

鬼は外、っていうくらいだからな。

豆は窓や玄関の外に向かって投げるもんだからな?

良いものはこちらへ、悪いもの怖いものは外へ、って意味だから」


「あれ?そうだっけ。

鬼退治じゃないんだっけ?」


「違います」






一夜明けて、日曜日。

床は掃除しなくてはならない。


床に散らばったであろう、豆。

回収せねばと床を探したが、豆は落ちていなかった。

小さく硬い豆は誤飲の原因になりかねない。

可愛いうちのこたちが苦しむ原因は早々に片付けなければ



「…まさき」


「あ、豆は危ないもんね!投げてないよ」


「そう、えらいな」


「うっかり食べちゃっても大丈夫!」



明かりのついた部屋。

俺の視線の先は床の上。

チラッとこちらを見ながら、ポリポリ音を立てて食べている可愛くて可愛くて可愛い我が家の黒猫と柴犬の姿だった。


彼らの口に運ばれているもの、すなわち俺の背へ被弾したブツは

乾キャットフードである。



「硬さがね、けっこうイイカンジじゃないかなーって!

これなら投げてもすぐ粉砕!てならなそうだし、さとしとかずが食べちゃってもおなか壊さないしね」


ニコニコ笑顔の雅紀。

褒めてと言わんばっかりだ。


「そういう気遣いはできるのになぁ…」






「んで、豆ならぬキャットフード回収はふたりにお任せ状態なんだ?」


「このあとウェットシートで床拭きするから大丈夫!」


そういう問題なんだろうか、という視線が送られるが、是と答える以外に俺の回答はない。






ちなみに、鬼面を被らず照明器具に紐で吊るしたのは何故かと聞けば。


「お面つけたらさー」


黒猫と柴犬は見たこともないような勢いで逃げていったそう。

しばらく部屋の隅から吠えられたという。

かずくんはともかく、さとしくんまで逃げたとは。

 


「来年般若禁止」


「はーい」



 


     







『さとしさとしアレなんだったの』


『わっかんねー。かず壊しにいかないんだ?』


『やだ、なんかヤダ』


『にんげんってアレ楽しいんかなぁ?』


『叫ばれるとさ、うるせえし。

もうやめて欲しいわ』


『かずシッポくるんて巻いちゃったもんな』


わうっっ!! 

 



※※※※※※

あれ、今日は4日



誤字が気になって仕方ないので微修正

初っ端からこれとは泣く。