※妄想です。
いた。
起きたら居なかった。
またか。
傍らにいたはずのぬくもりは気まぐれだ。
フラフラとすぐに居なくなる。
一緒にいればくっついてるのに、ひとりでいたいと思えば何も言わずに消える。
まぁ、こっちもひとりで居たい気分もあるから、そこはそれ。
夜は帰ってきて一緒に並んで眠るから。
「たまには探してみましょうかね」
のびっ
「ここじゃなかったか」
森の中のニンゲンの家。
以前、なんとなく窓から覗き込んだら、あいつか寝てた。
何故か、ニンゲンのベッドで。
「あれあれ?狼くんが珍しいね」
「あー」
「今日はいないねー。家主もね」
「みたいだね」
また居るかと窓から覗いてみたけど、今日はいない。
じゃあ、いつもの泉か。
そこまで行くか、帰って気長に待つか。
そんな事を迷ってたら、後ろから声がした。
そこには見慣れた猟師。
猟師なんて狼の天敵じゃないのか?って。
ま、普通ならね。
優しそうな顔してるけど、肩には銃。
それで何頭も仲間があの世に逝ったのも知ってる。
けど、だいたいはニンゲンを襲ったやつだ。
ニンゲンがニンゲンを守るのは当然のことだから、仕方ない事だ。
俺もあいつもニンゲンに関わることはあるけど、食べる対象と思ったことはない。
そんなことしなくても、この森はそれなりに食料は豊富だし、ニンゲンはでかすぎて倒すのも食べるのもめんどくさい。
そんな俺たちを知ってるから、この猟師は俺らに銃口を向けたりはしない。
つか、話しかけてくる。
そこは変だと思う。
ヒトとして。
「ねえ」
「うん?サトシなら泉じゃない?」
「だろうね。じゃなくて」
「はいはい?」
「サトシさぁ。
前にここで寝てたの見たことあるんだけど、ニンゲンの服着せられたんだよね」
ベッドで寝てた狼。
それ自体がおかしいんだけど、サラにおかしいのは、あいつは帽子を被ってた。
耳もしまって、顔もがっつり目まで隠して、頭の半分は布で覆われていた。
側にいって見てみたけど、どうしたって珍妙すぎやしないか。
揺すって問いただそうとしたけど、爆睡してて起きやしねぇ。
吠えてみたけど結果は同じ
野生の危機管理ってどうなってんだコイツ。
仕方ないからその時は諦めて、帰ってきたときに聞いたら、
ジュンに
「床で寝るな」
「ベッドで寝ろ」
「本気で寝るなら、毛が寝具につくからキャップかぶれ」
「ついでに着ろ」
だって。
だからあんな不自然な丸かぶりしてたのね。
ジュンくん命令なら仕方ないか。
って納得した。
そんなジュンくんもいない。
ふたりで出かけたのかな。
「・・・・・」
ふたりで?
「毛、毛。逆だってるよーニノちゃーん」
不本意というか、謎とも言えるが。
狼と猟師が並んで歩く。
昼寝してるであろう、狼のもとに。
赤いものが視界に端っこに映ったときの、あの湧き上がった何かはなんだっただろう?
後で思い返してもよくわかんない。
「狼が猟銃かまえるってどーいうことー!?」
うるせぇ。
*****
発見