※妄想です。
おひさしぶりです。
ここは陸の世界。
目の前のさんにんの後ろには陸が遠くまで続いてる。
自分のエリアである海とまるで違う色彩。
海はどこまでも青く蒼く碧く深淵の黒。
同じ色は陸にはない。
砂の白
草の緑
岩の銀灰
木々の茶
土の濃茶
合間に見えるものは花だろうか。
「…」
陸と海、色だけでこんなにも違うのか。
それから、
ああ、世界が回る。
ばっしゃん
「わーっ!?」
「どうした!?やっぱり怪我か!?」
「海から出て…じゃなくてっ海中に戻って!」
ぶくぶくぶく
色の洪水
それだけならまだ平気だ。
けど、ここは陸。
海と決定的に違うことが押し寄せる。
「…匂い多すぎ…」
情報量が多すぎて嗅覚が死ぬ。
「はー匂い、ねぇ?」
「アイバさんはどうなの。嗅覚特化でしょ」
「いんやー?
狼ですよ、匂いは敏感よ。
でもねー。生まれたときからこの空気の中で生きてるもん。
慣れてか普通つか、当たり前だからさぁ?」
「そりゃそっか、だよな」
砂浜から遠ざかって、岩場の影になる少し深みに移動した。
鼻まで沈めれば慣れた水の匂いで落ち着いた。
や、びっくりした。
そんなに違うものか、って岩の上に集まるさんにんが不思議そうに色々言ってる。
つか、まだ帰らねんだ。
「オレもか…」
「ん?なに?」
「…耳いんだね、…アイ、バ、さん」
「狼だからね!」
そういうもんなのか?
狼って鼻も耳もいいのか。
サメやシャチみたいだな。
「アイバくん笑顔で同意してるけど。わかってないよな?
共感できないところがもどかしい」
「海洋生物について少し勉強してみようか…
まだまだ知らないことがあるもんだ」
「そういうのはショウさんに任せるわ」
夕暮れに紛れて来た陸。
とっくに陽は沈み、その残滓が残る空。
夜の闇はもうすぐそこだ。
「…帰るわ」
ニノは夜にやってきた。
なら、この仲間らしき彼らも夜は問題ないんだろう。きっと。
「またくる?」
狼の尻尾がふりふり揺れている。
月の光もまだない中でも光る緑の眼。
期待と不安の色が混じっていることに、気がつかなきゃよかった。
「…気が向いたら」
陸なんてもうこない。
そう言ったってよかったはずだ。
だって、陸は危険すぎるから。
「また会おうね」
ふたりも笑って言った。
気が向いたら
ホントに、な。
*****
なかまたち