※妄想です。
片割れとふたり。
「あの駄犬~っっ!」
「さとちゃんが引いちゃったってのが信じらんないけどさー」
「アイツ次の給料全額消費させてやる。
じゃないと許せないぃぃい~!!」
「まぁデート費用くらいは残してあげてね」
はは
て笑う男。
ふたりで会う予定だったのに、追加でひとり現れた。
この場に来るとは聞いてなかったんだけど。
「櫻井」
「うん?」
「…なんでもない」
お酒のまなきゃやってらんない気分だけど、今はまだ夕方にもなってない。
軽く飲むくらいは許されるだろうけど、飲むなら浴びるほどじゃなきゃ納得いかん。
それに夜ごはんはウチで食べるって言ってきたもん。
「…やっぱアンタはその程度だったってことでよし?」
「響きがヒドイな」
「譲れるんだもんね」
「いや?譲った覚えはないけど」
横に座る相葉くんは黙ってススってわたしの前にケーキを滑らせてくる。
今はこれが似合う時間。
「好きだよ。それはぜんぜん変わんない」
「ふぅん…」
「確かにニノが出てきたところで困ったなーとは思った」
焦りもした。
余裕がなくなりかけた。
でもね。
「少し考えたんだよ。
接点の少ない社会人になってから同じひとを好きになる確率ってどーなんだ。
それで、改めて自分の気持ちを見直してみようって」
困ったって言う言葉通り、櫻井は困った顔して笑う。
どうみればいいのか、わたしの方が困る。
ショックを受けてた。
テーブルに頭ぶつけてた。
唸ってた。
けっこうな時間、無言で突っ伏してて、横を過ぎる店員さんがたまにチラ見していった。
わたしと相葉くんはそれ放置してケーキセット注文して。
起き上がった櫻井はもうこんな顔してた。
「…焦ったけど、なんで焦るのか。
智くんをニノに取られたくない気持ちは間違いないけど、だからって友達やめたくない。
今の今までの関係もやめたくない。
じゃ、俺はどうしたいんだ、と」
甘いケーキを口に入れる。
甘さは甘いままで苦くない。
よかった。
「長かったよね、俺」
「そうね」
「告白してフラれて、ツラいんだけどどっかそれも楽しくて」
「ヘタレのマゾ?」
「も少し言葉選んでね!?
で。俺ね、ホント好きなんだ、智くんのこと」
「うん」
「人柄も、言葉選びも、性格も、姿勢も」
「…うん」
「憧れ…てるんだなぁ…て」
いろんなとこ全部ひっくるめて尊敬してて。
恋心もその中に一緒にあって。
困った顔して笑う。
失恋の切なさも含まれてる顔。
「ま、応援はしないけどね!!」
「んじゃわたしのバックに付きなさい」
「承知しましたー!」
お水のグラスでカンパイ。
カッコつかないけど、お酒ないしコーヒーと紅茶しかないんだもん。
相葉くんもやっぱり苦笑いでカンパイ。
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S氏の奢りになりました