※妄想です。














「なんかこー…あんたらって痴話喧嘩、飽きない?」

「ニノがウザイ」

「おーのさんがひどい!」

「ま、そんでおーちゃんが帰ってくるんだったらケンカ歓迎だよね、オレは」


相変わらず悪魔ふたりはバチバチしてる。
あーばちゃんは悪魔のくせして優しい性格なのに、珍しい。


「優しいかもしれませんけどね。
自分の欲求にばか正直なところは悪魔らしさ全開ですよ、この方」

「オレがおーちゃんお嫁さんにするつもりだったのにっ」

「遅いですね。
はじめから私のものですから」




ちょいちょい

妖精が手を小さく降って呼んでる。
その横には淫魔。


「おーのさんはさ」

「うん」

「現状満足してる?」

「ん?」

「こう言っちゃなんだけど。
あんたは長生きとか興味無さそうだったし」

「あなたのこと言えたもんでもないけどね。
我々も基本的にその日を生きることに全力で、先々までは考えない。
ただ、無為に消えるのは回避したいところなわけ」

「命は自己責任だけどな。
あんたの執着のなさは…その」


濁す言葉に含まれる心配。

なんて優しいんだろうなあ。
人間は俺たちを恐れる。
異形の化け物って。

てもさ、変に建前とやらを必要としてないぶん、人間なんかより素直で正直で優しいんだよ。



「…ま、確かに生き続けることには関心はあんまなかったかな」

「だろうな」

「ぶっちゃけ消滅って終わりかたも面白いって思ったりもしてた」

「おーのさぁん!」


だから

満月になるとざわめく胸の奥を知りたかった。
消える前に確かめたかった。
ここでわからないなら、もうひとつの世界へと願うように。



…違う。

向こうに行きたかった。

向こうにあるから。

ざわめきの理由が。


…そこに、いるから。





「消えるなんて物騒なこと考えちゃダメ」

ぎゅ

後ろから回される手に慣れた。
というか、コイツいつも後ろから来るんだよな。

反射的に致命傷でも食らわせられたらどーするつもりなんだ。


「え、回避できますもん。
ワタシ強いもん」

「……必ず絞める」

「だって、おーのさんが私に無防備な背中を見せてくれるんじゃない。
あなただってメチャクチャ強いの知ってますよ」


…もう、振り向けない。

無意識なんて知らない。
この悪魔を受け入れてた自分なんて

知らない。




*****
安心感