※妄想です。













「あなたは…?」

「おれ…」


名前を勝手に言ったのはそっちじゃないか。
俺が教える理由なんてない。
巻き込むなよ。
支配なんてしたくない。
されたくもない。


なのに

なんで

口が開くんだ。

声になる音が喉までせり上がる。
ダメ
形にしたら終わる。


「私に、会いたくなかったですか…?」


…………。

「わかんね」





あからさまにガッカリの顔。
まさか、そんな返しが来るとは。
って思ってそうな驚きの表情。

名前を教えたからって、何もかも思う通りになると思うなよ。
初々しさなんて、こっちは持ち合わせてないんだから。
(というか初々しさって言葉を淫魔が教えてくれるまで理解してないかった)


「私はこんなにあなたには会うことを楽しみに楽しみにしてたのに…」

「わー」

「つれない…っ!」

「知らなーい」


わっ
て、泣かれても。

そもそも輪郭がおぼろげに見えるくらいの影のなかにいるやつだ。
なんで名前を教えられると思ってんだろう。


「泣くなよ」

「私はずーっと待って待って探して探し回ってたというのに!」

「お前の事情なんて知らんわ」

「なんて非情!
そんなとこも可愛いからムカつく!」

「どっちだよ…」

「あなたの存在を知ってから、私は一度も食事してません」

「え、コワ」

「お腹すいてお腹すいてたまりません」

「自己責任って知ってるか」

「その自己責任において、私はあなたしか食べることを拒否する体になっちゃったんです。
だから責任とってくださいよ」

「なんだその脅しは」

「扉の存続も私の飢えもあなたで解決!」

「なんだそれ」

「ついでに飢えた私の暴走も止められますよ!」

「…暴走?」

「あなたの回り排除とかー」

「消滅しろ」

「そうしないためにも!」



拒否する俺。
絡めとろうとする影。

どれだけ攻防しようと、それが言葉のやり取りにすぎないことは、わかってる。
だから逆らいたい。
逆らいたいのに。

わかってる。

俺も
影のなかのこいつも。









「……………          だ」


聞こえないなんて言ったらもう絞める。




「あなたは 私のもの」



なんかムカつく。





*****
過去も顔出ししてなかった