※妄想です。














大事な名前。
知られることは危険なこと。







一方的に片方だけが知られることは隷属を意味する。
自分の自我を失うようなもんだ。

それから、それと反対に双方が知るというパターンがある。
どちらも相手の弱味を握るという意味では、あまり変わらないリスク。
双方が双方に隷属するから。

けど、これを望んで教えあうのもいるんだ。
危険なのに。





「その危険をおかしちゃったのがあなたでしょうが」

「おーちゃん知らなかっただけじゃん!
アイツが騙したんじゃん!」

「でも同意と合意がなければ成立しないわけでしょ。
いくら子供の頃の話とは言ったって、おーのさんから無理やり聞き出すのは無理があるだろ」


おーのさん。
向こうじゃ呼ばれない。
こっちにいるからこその呼び方だ。

人間との共存、その狭間に生きてくには時に名前が必要となる。
だから、俺らにも呼び名はある。
基本的に人間でいうところの名字で普段は呼んでるんだ。


「んで?
あいつの名前は?」


自分で聞けよ。
笑うけど言うわけない。
呼び名はもう彼らも知ってる。


「子供の頃じゃ騙したようなもんじゃん」

「あーばちゃん。
いくら俺でも子供だったとしてもよ?
本名は言わねぇよ」

「でも言ったわけだ」

「言っちゃったんだよなぁ…
めんどくさいことしちゃったんだよなー」


そうでなければアイツが俺の前に現れるわけはなかったんだから。

運命なんて知るか。
そう言いたい。






「…その辺にしといてもらえませんかね」

さすがに泣きますよ、私も。


玄関の鍵ってなんだろう。
パーン!
って開いたらやつがいた。





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お迎え