※妄想です。













『…はよ』

『…おはようございます』

眼を開けたら、2体の人形が向き合っていた。



久しぶりだなぁ…。
小さな手を握って開いて、昨日の潤のよう。

回りを見渡せば視界は低く、昨日の夜には普通に見下ろしていた作業机の上が見えない。
見慣れている部屋がまるで違う場所のように感じられた。

あれ、デジャ・ヴ。


『…ニノの家以外で目を覚ましたのは初めてです』

『そなの?ここ実家だろ』


そうか、実家か。
ここは「さとし」の実家。
なるほど。


「あれー!?揃っちゃってるーっっ!」

『うるせえな、俺らの親』

『そうですね』


向き合う人形たちに、雅紀の驚愕の叫びが降ってきた。
ちょっと笑えた。








目の前には眠る智が横たわってる。
見慣れた姿だけど、久しぶりというかなんというか。
別に幽体離脱してたわけじゃないんだよな。
あれ。
オレはどういう状態だったんだっけ?


『俺も目の前に体があったら、今のさとしみたいだったのかなぁ』

『どうでしょうね…』

『ホントに言葉使い変わるんだ』

『意識してるわけではないんですが。
こうなると智の口調には戻せなくて』

『うーん…
確かにニノ混乱するかもな』

『そんなに違いますか』

『まず声のトーンが違うし。
本体で喋るより落ち着いてる感じだな』

『そう、ですか?』

『大人っぽい』


これは意外だ。
見た目は子供なのに。
なんでかなぁ。


『ねー相葉くーん』

「はいはい?」

『俺もこういう言葉使いのプログラミングってされてんの?』

「の、はずなんだけどねー。
さとしと同時進行してたから、同じベース突っ込んであるよ」

『なんで俺はこうならなかったんだ…』

『自然でいいと思いますよ』

『面白そうだし、ちょっと俺もそういう喋り方してみたかったわ』

『出来ませんか』

『一本調子の棒読みになりそう』


横で雅紀は腹を抱えて笑ってる。
変だけど楽しい。

でも、オレと潤の違いはなんだろう。
彼が言うように、生きて…ないのか。
それともオレと同じにどこかで眠ってるのか。


『やっぱ無理かーっっ』

「がんばれ松潤!出来る出来る!」

『いや無理』

「諦めんの早っ」

『違うよ』

「?」

『俺は俺。
それ以外にならないってことだよ。
俺はきっと』




彼は、見つけたのかもしれない。





*****
軋む