※妄想です。
戸惑いのひとたち














土曜日・食後の暴露



じりじり

じりじり

にじりよる人間。
後ずさる猫。


「…智」

『…』

「説明しなさい。
なんて言ったのかな?」

『えー…?』

「誰が、誰と、なにしたって?」

『…………………キス?』

「オーマイガッッッ」



ファーストキス♡
なんてものに夢みてたわけじゃない。
トリハダたつわ。

しかし


「なんで…」

なんでそんなに躊躇いがないの。
普通のトーンでごく当たり前みたいに言うんだ。
それじゃ
それじゃまるで。


「智やっぱりカラスにプロポーズされてんの間違いないんじゃんかー!」

『………』

鴉のとこに、あの潤くんとやらのとこに
嫁にいくの?智。



『…おめえら馬鹿じゃねぇの…?』


超ため息つかれた。










俺の膝にいた猫はため息とともに降りて、床に転がしてあるクッションに移動した。

めんどくさい

そう言わんばっかりの揺れる尻尾。

キスという単語に動揺する人間たちを尻目に、猫はいたって普通のままだ。
でも。


キス

あのカラスと普通にキスをするってことでしょ。
想像してもクチバシと猫の鼻先しか思い浮かべられないから、いまいち絵面になんないんだけども。

でも、キス。

ものすごく当たり前に智の口からこぼれた、パワーワード。
親しい間柄じゃなければ、絶対にしないこと。



…だよね?





*****
カラスは今頃くしゃみをしている