◆◆行政書士とは?◆◆

行政書士と聞いても「それ何?」という方が多いのではないでしょうか?私が行政書士になったことを友人に伝えたときも「???」という感じでした。私も行政書士試験の勉強を始める前はそんな感じでした。行政書士は日本の法律系国家資格の一つです。法律系国家資格は行政書士の他にも、弁護士、司法書士、弁理士、社労士、宅建士、等々があります。弁護士は法廷で弁舌を振るうシーンが映画やTVドラマでよく見かけるのでイメージはつかみやすいと思います。司法書士と言えば登記、弁理士は特許などの知的財産関連、社労士は社会保険や年金関連、宅建士は不動産関連、と何となくイメージがつかめる人も多いと思います。では行政書士って一体何をするのでしょうか?

 

◆行政書士の仕事は書類作成

行政書士法という法律があり、そこに行政書士ができることが記載されています。同法一条の二にあるように「他人の依頼を受け報酬を得て①官公署に提出する書類を作成すること②その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成すること」が主な行政書士の仕事(独占業務)です。

 

①官公署に提出する書類作成

官公署とは、各省庁、都道府県庁、市役所、町村役場、警察署、保健所などの行政機関のことです。ではここに提出する書類とは何でしょうか?これらの書類のほとんどが許認可に関することでその種類は1万種類を超えるとも言われています。許認可とは、新たな事業を始めようとする時に必要な行政の許可のことを言います。例えばあなたが飲食店を始めようと思ったとします。日本は自由主義国家であり、憲法22条で職業選択の自由も保障されているので、原則として飲食店を始めるのは自由のはずです。しかしながら、何の制限もなしに誰でも自由に飲食店を始めてよいとすれば、どうなるでしょうか?衛生状態の悪いお店もでてきてそこで飲食した人が食中毒になって最悪命を落とすこともありえます。そこで国民の健康や生命を守るため、飲食店の営業には行政の許可が必要であると食品衛生法で定めているのです。営業許可をとるためには、営業許可申請書を管轄の保健所に提出する必要がありますが、申請書や添付書類の不備により不許可となっては大変ですので、書類作成のプロとして、飲食店オーナーの依頼を受け、報酬を頂きこの営業許可申請書を作成するのが行政書士の仕事です。

 

②権利義務又は事実証明に関する書類の作成

この文言だけを聞いても「ちょっと何言ってるかわからない」ですよね。

法律用語というのは、本当にわかりづらくて困ります。

 

権利義務に関する書類

まず権利義務に関する書類とは何でしょうか?権利や義務の発生などの効果を生じさせることを目的とする意思表示を内容とする書類を言うのですが、例えば売買契約書がこれに当たります。仮にあなたが自動車を買ったとしましょう。あなたには自動車販売店に対し、自動車の引渡しを要求する権利が発生します。これに対し自動車販売店は、あなたに自動車を引き渡す義務が発生します。(権利と義務は表裏一体のものです)つまり自動車売買契約書は権利と義務を同時に発生させる意思表示を内容とするものであり行政書士法に定められている「権利義務に関する書類」ということになるのです。遺産分割協議書もこれにあたります。故人(被相続人)の所有していた財産を相続人(故人の配偶者、子ども等)が、具体的にどのように分割するか協議した結果(相続人の意思表示)を記載したものが遺産分割協議書です。協議の結果、特定の遺産を受け継ぐと決まった人には、それを受け継ぐ権利が発生します。その財産を所有していた被相続人(故人)には引き渡す義務が生じます。(被相続人はその時すでに亡くなっていますので、引き渡す義務は相続人全員が引き継ぎ、引渡し義務者は相続人全員ということになります。)このように遺産分割協議書は権利義務を発生させることを目的とする意思表示を内容とする書類です。その他、贈与・賃貸・雇用・委任・請負等に関する契約書、念書、示談書、請願書、告訴状、告発状、遺言書、離婚協議書等、権利義務に関する書類は多岐にわたります。

 

事実証明に関する書類

事実証明に関する書類とは、「社会生活に交渉を有する事項を証明するに足りる文書である」と定義づけられています。その一つに実地調査に基づく各種図面類が挙げられますが、例えば保健所に対し飲食店営業申請を行う場合、営業許可申請書の他に、店内及び設備を記した図面を提出する必要があります。客席、調理場、トイレ、防虫設備などは、十分な衛生が保たれる配置になっているか等を図面をもとに保健所がチェックしますがこれをクリアしないと営業許可がおりません。つまりこの図面は、社会生活(飲食店を開業すること)に交渉を有する事項(営業許可基準を満たしているかどうか)を証明するに足りる文書(図面も文書であると解釈します)と言えるわけです。ちょっと定義に無理くりあてはめた感はありますがまあこういうことです。事実証明に関する書類は他にも、各種議事録、会計帳簿、貸借対照表、損益計算書等の財務諸表、申述書、自動車の車庫証明等があります。要は事実を証明する書類なわけですが、どんな事項でも当てはまるのではなく、「社会生活に交渉を有する事項を証明するに足りる」というところがミソとなります。

 

◆行政書士の資格を持たない人が行うと厳しい罰則があります。

行政書士法一条の二にあるように「他人の依頼を受け報酬を得て①官公署に提出する書類を作成すること②その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成すること」が行政書士の主な仕事(独占業務)です。これを行政書士の資格を持たない人が行うと、なんと「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」に処せられます。(行政書士法21条)なんと懲役ですよ!これはかなり厳しい罰則です。では飲食店を開業するオーナー自身が開業許可申請書を作成してはいけないのか?相続人が自ら遺産分割協議書を作成してはいけないのか?というとそんなことは勿論ありません。「他人の依頼を受け報酬を得て」というところがポイントです。報酬を得て依頼人のために業として行うことができるのは専門家である行政書士だけ、ということです。行政書士はそれだけ社会的責任の重い資格であるということの裏返しでもあると思います。気を引き締めなければ!

※弁護士、司法書士などは弁護士法、司法書士法の定めにより、行政書士の資格を持たなくてもこれらの業務ができたりしますからちょっとややこしいですが・・・

 

 

今回の投稿は以上です。これからも行政書士業務やそれに関する時事的なトピックについて投稿していきますのでどうぞよろしくお願いします。