働いてみて思うこと | エルコのブログ ~ドイツはライン川のほとりで~

エルコのブログ ~ドイツはライン川のほとりで~

ドイツはライン川の近くに住むエルコが、日常の風景をお届けします

かつて本業にしていた職はかなり特殊なもので、修行中は奉公のような感じでした。

お手伝いをする代わりに練習させて貰えるといった感じなので、かなりキツイお手伝いをしました。

工場内で裏方の仕事。

重たいものを一人で持ち上げたり運んだり、壁をキレイにしたり。

本職のお手伝いもありまして、それはもう目の回るような忙しさ。

少しでも遅れようものならすぐにどやされます。

なので2時間近く走りっぱなしで酸欠になり、顔の皮がピリピリするようなこともしょっちゅうでした。

 

そこでの経験が、今の洗い場の仕事に役立っていると言えます。

同じような感じですから。

急いで洗って、急いで棚に戻して、冷蔵室の壁を水洗いした後スポンジでこすってまた水で流したり。床の水かきまで同じ感じ。

かつての工場内に比べたら部屋は小さいので洗うのに時間なんてかかりませんし、走ってもたかが知れています。息切れもしないし。

 

仕事を初めて初日、2日目くらいは覚えること(主に片付ける場所)が多くありましたが、仕事の後にはさほど疲れが出ませんでした。

むしろ、楽…というか、やりやすい!と思ったほどです。

 

そこで日本との違いに気づきました。

特殊な仕事で特殊な環境で、前時代的な封建的な世界でしたから、それと比べてしまうのはフェアではないかもしれませんが、本職以外の様々なバイト経験からも違いがあると感じました。

 

まず日本でのことです。

やり方を教わったら、そのやり方通りにやらないと怒られます。

早く、そして更にキレイになるならやり方は変えても良いだろうと思って自分なりに工夫をすると、怒られます。どうして同じやり方をしないんだ!?と。

勝手に変えるな!と。

言われた通りにしないとやったことにならない。

何故なら、今までそうやってきたから。

無駄な作業があってそれを省いても、クオリティが更に上がるならその方が良いと思うのですが、クオリティの向上よりも手順に重きを置きます。

作業効率が上がった方が、他の仕事に割ける時間も増えるのに、余計なことをしなければなりません。

例えばですが、壁を洗うとします。

教わるやり方は、壁を1枚洗う毎に床の水をかかなければならないとします。

壁を4面洗ってから、最後に床をキレイにして水をかく方が理に適ってるし早いのでは?と思ってそうすると、怒られる。

そんな感じです。

理由を説明しようにも、その時間も聞く耳も持ちません。

理由は「今までずっとそうやってきたから」、やり方を変えるのは伝統を変えるのと同じでケシカラン!!と言うわけです。

 

こちらではどうか。

まず、説明がそもそもテキトー。

要点だけを重視します。

壁は水をかけて洗って、よく人が触る所(ドアノブとか)は、スポンジで擦ってからまた水をかけてね。配線がある所は気をつけてなるべく水をかけないようにねー。

 

こんな感じ。

 

部屋はそんなに大きくないし、壁もちょっと汚いから壁もスポンジで擦っとこ。

じゃーっとやってガーッと擦ってビシャーっと流してお終い。

でも、ちゃんとキレイになってます。

 

日本だったら、自分の判断で壁をスポンジで擦ったら怒られます。

余計なことをするな。言われたとおりにだけしろ。余計に時間がかかってるじゃねーか。等など。

 

換気扇のフード(といってもかなりデカイ)の油汚れを取る時もそんな感じ。

洗剤を薄めたやつで、こことここをキレイにしてね。

重要なのはこの部分に油が残ってないこと。

洗剤で落ちなかったら言って。お湯を用意するから。

お終い。

 

日本でレストランでバイトした時にも掃除したことがありますが、どこから始めてどういう順番でどういう風にやって、と細かく指示されました。

 

まぁ、その指示が全く役に立たなかったかと言うとそうでもなくて、泡を立てて汚れの上に載せて少し置いておくとか、そういうコツみたいのもあったので全部が悪い印象ではありませんが、それでもこうした方がやりやすいなと思って工夫すると、すぐに言われましたね。

 

簡単に言うと、こっちは「終わり良ければ全て良し」。

手順ややり方はどーでもいー。

長々と時間をかけてゆっくり丁寧にやっても、後が詰まって大変になるのは自分ですから、ゆっくりやってても邪魔にさえならなければ何も言われない感じ。

ゆっくり丁寧にはやらないけど。

私の挑戦はいかに早く、いかにキレイにできるか…なのでゆっくりやる選択肢は私の中にはありません。

 

日本の印象は、いかに手順を正しく踏むか、そしてその上で尋常じゃない速さを求められます。正直、無理ゲー。

だってその手順に「10分置く」とあるのに、5分で終わらせろとか言われても無理でしょう。(たとえ話ですけどね)

 

重たいものでも、仕事は仕事だから持て!と言われ、持てないと怒られるから文明の利器を使おう(台車とか)!と工夫をすると怒られます。

誰の邪魔もしないのに。

そんなやり方する奴は今までいなかった…と。楽をするな…とかね。

 

大きな重たいお鍋があって、しまう場所は高い棚の上…。

えーーーガーンってなってたら、「やってみて無理だったら教えて。手伝うから」と言われました。

 

やだ、何それ。優しい…

 

調理師さんなので自分の仕事も忙しいだろうに、場所も丁寧に教えてくれるし、自分の手を止めてまで手伝ってくれようとするなんて。

お手を煩わせるわけにはいきまへーーん!

気合と根性で載せたら「できたじゃん!」と笑いながら言ってくれました。

「まだまだ力があって良かった…」と言ったら笑われました。

コミュニケーションが取れるんです。

 

面接の時に「重たいものを持ったりする男の職場」と言われていたので、それを承知で来ているわけですから、できないとは言いたくないんですよね。

本当に無理なのは無理なのでハッキリ言いますが。

 

頼まれたことも、すぐにやるのか、今やってることが終わってからで良いのか。

日本だとどちらにも怒られます。

すぐにやらないと頼んだ側から怒られ、すぐにやるとやっていたことが終わっていないのに他のことをするなと怒られ…。

どーすりゃいーのよ?

 

それを踏まえてこっちではタイミングを聞いてみたら「好きな時でいいよ。そんなに時間が掛からないの分かってるから、自分のタイミングで」と言われました。

なので一緒に洗い物をしているおいちゃんに事情を説明して、掃除が終わったらこっちをやるからね!と伝えて作業に入り、終わってみたらおいちゃんが洗い物を済ませてくれてたという…。

でも、おこられないし文句も言われない!

 

一人で抱え込まなくて良いし、一人でやらされることもない。

もしかしたら他の職場は違うのかもしれませんけど、今の職場は自由度が高くてやりやすい。それに褒めてくれます。

早く終えたら「早いのにキレイ。良くやった」とか。

 

20年前と今とでは経験値も違うし図太さも違う、更には古い職人の世界だったというのもあるので、単純に比べられないかもしれませんが、今の職場は驚きと感動の連続です