Purslane Promenade すべりひゆの散歩道-この本を読んで!


太平洋に面した入り江に小さな集落があります。日本の田舎ではお約束の過疎と高齢化の見本みたいに、人の気配が無い通りが梅雨の雨に濡れています。
約30年前に、原発の建設可否をめぐって激しい対立があつたとは、今の静かすぎる風景からは想像もできませんが、まだ、その痛みは完全には癒えていないようです。
推進派と反対派に、親子兄弟が分かれて争ったという話。どんなに成績が良くても「親が反対派」という理由だけで、役場の職員採用試験からハジカレタと言う話。情報を一足早く手に入れて予定地周辺の山林を買いあさって儲けそこなった小金持ちの話。できていれば道も役場も立派になっていたのに、と言う悲憤慷慨(これは、私も直接に聞いた。原発がお流れになって少々遅れたがご立派な町役場が建設中です)etc。

さて、ご紹介の書籍は、1978年に雑誌発表されましたが、フクシマが無ければ単行本として日の目を見ることは無かったと思われる小説です。幻戯書房から昨年10月に出版されました。
原発だけでなく、ごみ処理や葬式と墓の問題など、テーマは盛り沢山。
お時間がある方は、ぜひご一読を。読んで楽しくなる小説では無いのですが…。