この日の刺身盛り合わせ

 

「旬の味 田一」は時々、利用している。地下鉄中央線「緑橋」駅から約200mの場所にある(食べログは、こちら)。緑橋へは、近鉄生駒駅からわずか20分だ。

 

 

 

「緑橋」とか「深江橋」という駅名は、かつてここを流れていた千間川(せんげんがわ)という太い用水路にかかっていた橋の名前だそうだ(今は暗渠となり、橋も実在しない)。

 

 

このお店は、私の大学時代の友人・Yくんの親戚筋にあたるので、Yくんに誘われて時々、お邪魔していた。今回は奈良市に住む別の友人と2人で、「春の魚介を楽しもう」と、繰り出した。予算だけお伝えし、料理は「お任せ」でお願いした(訪問日=2026.4.22)。

 

 

前菜に続き、刺身盛り合わせが出てきた(=トップ写真)

 

よく「東京人はマグロを好み、関西人は白身魚を好む」と言われるが、いろんな白身魚と、ハモまで出てきた。これはうまい!

 

 

お次は、春の山菜などの天ぷら。桜エビの赤が、食欲をそそる。天ぷらは、「腹を空かして行って、親の敵(かたき)にでもあったように揚げるそばからかぶりつくようにして」食べよ、と書いたのは池波正太郎だったっけ(『男の作法』)。

 

 

おお、春の毛ガニが出てきた。食べやすいように、うまく包丁が入っている。これで1人前だ。近くのテーブルに、賑やかな大阪マダムたちのグループが着座されたが、気にせずカニにしゃぶりつく。ああ、幸せ!

 

焼き物。料亭の一品のように、繊細な盛り付けだ。

 

アワビも、このように手をかけて、豪華な逸品に仕上げている。

 

 

意外や意外、ここで牛肉が出てくるとは!とても柔らかくてジューシーな和牛だった。これはおろしポン酢でいただいた。Yくんは、よく「カツカレーを予約して、締めに食べる」と言っていた。さすがにそのような蛮勇はなかったが、牛肉は良いアクセントになる。

 

 

締めは寿司とお吸い物。お寿司屋さんではないのに、こんなにおいしい寿司を提供されるとは!

 

デザートは甘酸っぱいハッサクのヨーグルトがけ。和歌山県出身の私は、柑橘類が大好物だ。それが最後に出てくるとは!

 

いやー、これはおいしかった。春を感じさせる料理の数々。体に丸ごと「春」を取り込んだような気分になった。これで1人前が1万円とは! やはり「お任せ」にして、正解だった。メニューを見て注文すると、どうしても、いつも同じような物ばかり頼んでしまうのだ。

 

田一のご主人、奥さん、手配していただいたYくん、ありがとうございました! 必ずまた、奈良からお邪魔いたします!

この写真は、フリー素材サイト「ぱくたそ」から拝借

 

先日、当ブログに〈団塊の世代は「早死に」するのか?〉という記事を書いた。なお団塊の世代とは、〈昭和22年(1947)から昭和24年(1949)ごろの第1次ベビーブーム時代に生まれた世代。他世代に比較して人数が多いところからいう〉(『デジタル大辞泉』)。

 

昭和28年(1953)生まれの私より、4~6歳上なので、今だと76~78歳の後期高齢者ということになる。最近になって私の周囲で、この世代の訃報が続いたので、「やはり皆さん、働き過ぎたのだろうな」と思っていたのである。

 

この記事を私のFacebookに転載したところ、Fさんという男性(社会保険労務士)から〈同世代の人が多く、競争に巻き込まれて頑張ってきたように思います。逆に、大義というか大きな志に生きる人が少なく、これといった大人物を輩出していないように思っています〉というコメントをいただいた。

 

これには、気づかなかった。総理大臣経験者でいうと、小泉純一郎さん(昭和17年=1942年生まれ)と安倍晋三さん(昭和29年=1954年生まれ)の間あたりの世代になるだろう。思いつくままに名前を挙げると、鳩山由紀夫さん(昭和22年)、菅直人さん(団塊世代より1年早い昭和21年)、菅義偉さん(昭和23年)などになるが、いずれも短命内閣だった。

 

実業家でも、ユニクロの柳井正さん(昭和24年)、ドン・キホーテの安田隆夫さん(昭和24年)、ジャパネットたかたの髙田明さん(昭和23年)くらいしか思い浮かばない。これは「大きな志に生きる人が少ない」ということになるのだろうか。

 

しかしミュージシャンなど、芸能人に目を向けると俄然、様子が違ってくる。矢沢永吉さん(昭和24年)、吉田拓郎さん(1年早い昭和21年)、加藤和彦さん(昭和22年)、財津和夫さん(昭和23年)、谷村新司さん(同)、泉谷しげるさん(同)、大滝詠一さん(同)、南こうせつさん(昭和24年)などなど。

 

団塊の世代には、政財界とは違う世界で活躍されている人が多いのである。志の立て方というか、志の「方向性」が違うのである。これらをひとくくりにして「世代論」を論じるのは早計に過ぎるだろうが、団塊世代のミュージシャンのおかげで、日本の音楽シーンが豊かになったことだけは、間違いがない。

この写真は、「日本映画専門チャンネル」のサイトから拝借した

 

加入しているCATVの「日本映画専門チャンネル」で、映画『敵』(監督=吉田大八、主演=長塚京三)を見た(2026.4.24 19:00~)。2025年1月に劇場公開された、世評の高い映画だ。同チャンネルのサイトには、

 

筒井康隆の同名小説を、鬼才・吉田大八監督がスケール豊かに映画化。「紙の月」など秀逸な原作に映画的趣向を凝らしてきた吉田監督が示唆に富むモノクロ作品に仕上げ、東京国際映画祭で3冠獲得。

 

妻を亡くし、古い日本家屋で独り暮らしの77歳の儀助(長塚京三)は、預貯金を視野に規則正しく生活し、教え子の靖子(瀧内公美)に料理を振る舞うなど老後をそれなりに楽しんでいたが、パソコンに“敵がやって来る”と不穏なメッセージが届き、日常が一変する。

 

ネタバレしない程度に、同映画の公式サイトの「Story」を少し紹介しておく。

 

毎日の料理を自分でつくり、晩酌を楽しむ。朝起きる時間、食事の内容、食材の買い出し、使う食器、お金の使い方、書斎に並ぶ書籍、文房具一つに至るまでこだわり、丹念に扱う。

 

麺類を好み、そばを好んで食す。たまに辛い冷麺を作り、お腹を壊して病院で辛く恥ずかしい思いもする。食後には豆を挽いて珈琲を飲む。食間に飲むことは稀である。使い切ることもできない量の贈答品の石鹸をトランクに溜め込み、物置に放置している。

 

親族や友人たちとは疎遠になったが、元教え子の椛島は儀助の家に来て傷んだ箇所の修理なども手伝ってくれるし、時に同じく元教え子の鷹司靖子(瀧内公美)を招いてディナーを振る舞う。後輩が教えてくれたバー「夜間飛行」でデザイナーの湯島と酒を飲む。そこで出会ったフランス文学を専攻する大学生・菅井歩美(河合優実)に会うためでもある。

できるだけ健康でいるために食生活にこだわりを持ち、異性の前では傷つくことのないようになるだけ格好つけて振る舞い、密かな欲望を抱きつつも自制し、亡き妻を想い、人に迷惑をかけずに死ぬことへの考えを巡らせる。 遺言書も書いてある。もうやり残したことはない。だがそんなある日、パソコンの画面に「敵がやって来る」と不穏なメッセージが流れてくる。

 

映画のタイトルにもなっている「敵」とは何か、少し考えてみた。

 

①自らの「老い」(現実と夢・幻覚との混濁、死の気配)

②孤独感、孤立感(自らの世界に閉じこもる)

③衰えぬ「性的欲求」(妄想に近いレベル)

④現実的な不安(金銭的な不安、社会不安)

 

長岡京三の入浴シーンがあり、衰えた上半身が写し出されたときは、ドキッとした。トシを取ると、こんな体になるのか。主人公は儀礼的に送られてくる石鹸を持て余し、スーツケース一杯にため込んでいる。

 

十分な蓄えはないが、講演料は「1回10万円」と決め、それ以下では仕事を受けない。「残高に見合わない長生きは悲惨だから」、そんなセリフもある。しかし苦学する女子大生に同情して、虎の子の300万円を振り込むが、とんずらされてしまう。主人公の意識は次第に混濁し、頻繁に亡妻が現われる…。

 

自らの「老い」を気づかされる貴重な機会だった。ご一見をお薦めしたい。