モデル級、現役女子大生が集う『BADD GIRLS』 読者モデルとしてスカウトする夜の世界の手口 | a.k.a.“工藤明男” プロデュース「不良の花道 ~ワルバナ~」運営事務局
■夜の街で枯渇する貴重な美女たち

 東京のセレブが集まる歓楽街、赤坂、銀座、六本木。ここには金を持った人間と、その金にあやかりたい女たちが夜な夜な集まってくる。高級クラブ、キャバクラ、ガールズバーといった、己の虚栄心と性欲を満たすための店が並び、きらびやかで怪しい魅力に満ちたZONEを形成している。

 この手の店が常に頭を悩ませているのが、商売道具である「女集め」である。景気が悪くなり「夜の世界」に身を落とす女性が増えているが、金持ちが大金を際限なく積むような絶世の美女はいつも取り合いになる。


 他店から引き抜けば暴力を厭わない揉め事となる。いかに美女を囲っているかで、この商売の先行きはある程度決まってくるのだ。漫然と求人募集を掲げているだけではだめで、優秀なスカウトマンが重宝される。


 だが状況は厳しい。路上でのスカウト行為は年々規制が厳しくなっている。歓楽街でのスカウトや客引きは見慣れた風景なのだが、自治体としては“街のイメージを壊す”として殲滅したいのが本音である。水商売を経験した事が無い“カタギ”の女を口説くのは難しくなっている。


■モデル級の美女が集まる“キャンパスカフェ”

 ところが近年、他にないスカウト方法で美女を集め、一部で話題となった系列がある。六本木、赤坂、銀座に店舗を構える「キャンパスカフェ BADD GIRLS」である。

バッドガール

<爽やかで自然体な女子大生をイメージさせる『BADD GIRLS』ホームページ>



 同店のキャッチフレーズは“キャンパスカフェ”。「女子大生限定」を謳い、ホームページを見ると、初々しい女の子たちの笑顔を見ることができる。むろん、 実態は「カフェ」などではない。

 入店した客の数に応じて横に女の子がつき、ドリンクをおねだりされ、おしゃべりして楽しい時間を過ごし、黒服に呼ばれて あっという間に離れていく。社会人になってめっきり関わることのなくなった女子大生に鼻の下を伸ばして長居をすれば、大金を請求されるという、お決まりの キャバクラそのものだ。

 ところで、銀座や六本木の激戦区にあって、このバッドガールズが一線を画しているのは、文字通り「女の質」である。モデル級の美女揃い、それも現役女子大生ばかり。いったい、どのようなやり方で女性を集めているのだろうか。


■女の子の憧れ“読者モデル”という甘言

「私、フリーペーパーの編集部の者です、可愛いなと思って。ぜひ、読者モデルになりませんか?」

 そう声を掛けられたのだと六本木店に勤務する女子大生は語る。

「それでついていったらこのお店でのバイトを勧められました。今思うと、ひょっとして勧誘のほうがメインだったんじゃないかな~(笑)。そのへんは大人の事情ですよね」(女子大生)

 彼女の他にも勤務する女子大生たちが口をそろえて言うのが、「この店が初めて」。ウブで可愛い女子大生がを夜の世界へと誘い込む手口としては実に秀逸である。「キャバクラで働く」ことを直接伝えるのではなく、読者モデルの募集として声を掛ければ確かに障壁はグッと減る。


 昨今、よく耳にする「読者モデル(以下、読モ)」という存在の説明をしておこう。読モとは芸能プロダクション に所属するプロのモデルではなく、一般人としてファッション誌に登場するモデルのことだ。

 タニマチを見つけて、芸能人や〝実業家”に転身する読モも少なくない。男性諸氏には理解しがたいだろうが、一部では「読モヒエラルキー」と言われるような上下関係が言われるほど、若い女性の憧れの一つになっている。


 渋谷や池袋などの繁華街で声をかけられた女性は、この自称フリーペーパー編集部員に連れられ事務所に行き、読モとして「登録」を済ます。その後、「お金とか困ってない?」「紹介したい仕事があるんだよね」と言われ、それぞれの経緯があり六本木や銀座の夜の世界に入っていく、という流れである。


■信用の裏付けとなる大手協賛企業たち

unit
<『UNI.T』のホームページは現在も残っている>


 しかし、いくら読モが憧れだからと言って、架空のフリーペーパーをでっち上げて「読モになりませんか」と言われたところで簡単についていくほど、女子大生もバカではないだろう。

 そう、若い女性に人気の『CanCam』や『vivi』などで活躍するモデルが登場する、そういうれっきとしたフリーペーパーがこのスカウトに協力している。否、むしろスカウトを行うためにフリーペーパーを発行していた、というほうが正しいだろう。


 そのフリーペーパーは、『UNI.T』(株式会社ミズ・コミュニケーション発行)。女子大生エコサークル 「EMANON」のプロデュースで08年に創刊し、ファッション誌の現役モデルが登場している。(現在は休刊)

 EMANONとは、慶應大学の女子大生が代表を務め、東大、中央、青山、上智、専修など女子大生が幹部として 所属する女子大学生サークルだ。エコキャップ運動などのエコ活動を行っているというふれこみのサークルだ。

『UNI.T』の協賛企業は、電通やエイチアイエス、東宝などの有名企業だけでなく、芸能事務所のオスカープ ロモーション、スターダストプロモーション、エクセルヒューマンエージェンシー、トヨタオフィスらも名を連ねている。

 大手企業がバックアップし、「エコ活動」をやっている女子大生のサークルがキャバクラの斡旋とは、あまりにギャップが大きすぎてだれも想像だにしていなかっただろう。

慶応

<高学歴なだけでなく、お嬢様・おぼっちゃまのイメージも強い慶応義塾大学・Wikipediaより>


『UNI.T』の名刺を持ったスカウトマン数十人が渋谷、表参道、原宿などの街に散らばり、読者モデルを探している。読モとして登録された女性たちに BADD GIRLSなどでのアルバイトを持ち掛けるという仕組みだ。

「女の子はたくさん登録されているので、無理に店に勧誘することもないらしいですよ。そもそもファッションに 興味がある子は、とにかくお金がかかる。次第に女の子の方から『働かせてくれない?』と言ってくるみたいです」(事情通)


■緻密な計画の裏で糸を引く“水商売の大御所”

 女子大生エコサークルの作るフリーペーパーに、大手広告代理店や芸能事務所を巻き込んで、読者モデルをスカウ トする形でキャバクラで働く女性を集める。あまりによくできたシステムであるが、この背景には強力な仕掛け人がいる。

 六本木の夜の世界では知る人ぞ知る“水商売の大御所”の権藤和彦という男だ。

 権藤氏はBADD GIRLSだけでなく、系列店で「東京で出会いを求める大人たちの会員制ラウンジ」EN  COUNTER、六本木の高級クラブ・FUSIONなど、数多くの店を持つ。

 夜の世界でのキャリアは長い。六本木の一等地にあり、街の象徴であった「TSK・CCCターミナルビル」内で「ONE EYED JACK」というクラブ を運営していた 過去もある。


 高級クラブやレストラン、オフィスなどが入居していたTSKビルはレジャー施設として栄えた。そのTSKビルを設立したのは暴力団「東声会」のトップとして知られた町井久之氏である。

TSKビル
<2010年にも不正な金の流れが話題になったTSKビル・『THE NEWS』(TBS系列)>



 2008年に完全に解体された後、現在も不透明な金の流れを巡る話が絶えない、いわくつきの場所だ。そのような歴史的背景を持った有力者が、女子大生限定キャバクラの裏に鎮座しているのである。


 ファッション業界は言うまでもなく、若い女性ならだれもが憧れる世界である。お洒落をしたい、金を稼いで友達に差をつけたい――そう願う欲望の先には、〝コワモテ”が跋扈するアウトローな世界が広がっている。これは、この街の構図そのものだ。

(取材・文 宮前佳史)