降り立ったザルツブルグは、
そよ風ふく緑の町だった。
モーツァルトの町、
彼が生きた町。
映画「サウンドオブミュージック」、
あの名作の舞台でもある。
名所がギュッと狭い範囲で集まっており、
観光客の集団がゾロっと列をなす。
そんな中でも目を引くのは、
修学旅行の学生達。
もちろんドイツやオーストリアの、
まだ10代と思わしき生徒達。
大笑いしながら、
じゃれあいながら。
「どこの国も一緒だなぁ」
そんな風に横目で眺めた。
早くも帰りたげな子もいる。
集団で路地に座り込む子もいる。
「あぁ、いたいたあんな子達…」
懐かしき記憶が脳裏に駆け巡る。
僕はどんな少年だっただろう?
ふと想いを馳せた。
群れるのが嫌いで、
グループに属すのを嫌った。
媚びるのもいやだが、
孤高ぶるのもいやだった。
そこにひょっこり現れたギター。
まるで唯一の話し合い手のようだった。
それが自分の居場所になった。
ギターと歌さえあれば孤独は消えた。
それで今まで来たような。
あの少年がまだいるような。
修学旅行の学生をボンヤリと眺める。
ザルツブルグのカフェテリア。
苦いコーヒーをすすり上げ、
席を立った。