桜の魅力を一言で言えば、

「散り行く姿」の美学。


ここまで花の散る姿を、

美化した花はない。


ハラハラと舞い、

人生の交差に降り積もる。


「侘び寂び」と言う言葉がある。

郷愁や哀愁。


ハツラツとした太陽の元でなく、

ひっそりとした日陰の輝き。


鈍い色づきのそれは、

老いゆく命の肌色に馴染む。


諦めとは違う、

悲しみの受容。


愛が許しならば、

まさしく死への愛かもしれない。


誰もが散り行く。

太陽が翳る時がくる。


しかしそれが人生であり、

生きると言うこと。


桜はそれを、

黙って魅せる。


今年もハラハラと、

新しい青の空に降る。


春は誕生でもあり、

死でもある。


薄紅色の許しが、

それを静かに抱き止めてゆく。