茶道や仏教の世界では「聞香(もんこう」と言うものがある。

「香りを聞く」

なんとも素敵な言い方だなぁと思う。

 

最近、朝目覚めるとお香を焚く習慣ができた。

以前お墓参りに行く際に購入したお線香。

それをなんとなく部屋で焚いてみた。

 

香りは立派なインテリアの一部。

机や壁紙、椅子やライト。

物だけで居心地は決まるのでなく、

香りも環境の一つなのだと実感する。

 

「心は環境しだい」

僕はそう信じている。

 

ゴミのまったく落ちていない場所に、

ゴミをポイ捨てする人は少ない。

逆に薄汚れた場所で、

伸び伸び悠々と深呼吸できる人は少ない。

 

環境に応じて人は"その心"になる。

神聖な香りに包まれた時、

人は優しい気持ちになるものだ。

 

あぁそうか。

祖母の家で聞いたあの香り。

畳の香り。

線香の香り。

シンと静まり返った日向の香り。

 

懐かしき穏やかな時間は、

あの香りにあったのだ。

目を閉じれば浮かぶ景色に

寄り添う香りがいつもあった。

 

「香りを聞く」

日本ならではの味わい方。

時を慈しむ姿がある。