蝉時雨、夕立、入道雲。

夏の燃えるような騒がしさの裏に、

静まり返った寂しい影を見る。

 

それはまるで、空を映す水溜りに、

風が吹き波紋が広がる様に似ている。

 

8月も半ばを過ぎると、

夏の折り返し地点を過ぎた感覚となる。

秋に向け日が傾き始めた感覚。

 

一年一年過ぎてゆく。

桜が散る様を見て感じ。

日陰に溶け残る雪だるまを見て感じ。

靴底の枯葉を踏む音に感じ。

干された白いTシャツを見て感じ。

 

過ぎゆく日々が悲しくも愛しい。

それは誰も取り戻すことができない。

髪をなぜ吹いた風のように、

振り返れど、もうそこにはなく。

思い出と言う、ただ美しき手触りだけ残して。

 

夏がゆく。

二度と戻らぬ夏がゆく。

ただ悠然と青き空を広げ、

僕の前を通り過ぎてゆく。

 

夜空の花火、真っ赤なスイカ、鳴る風鈴。

夏の燃えるような騒がしさの裏に、

静まり返った寂しい影を見る。