心にも部屋があって、

定期的に掃除や整理をしなくちゃならない。

 

なんとなく塞ぎ込む日がある。

理由はない。

布団から抜け出したくないような朝。

モヤモヤして、気分が重い。

 

そんな時、心の部屋を見渡す。

「最近掃除してなかったなぁ」

脱ぎ散らかした服。

シンクにたまった食器。

薄汚れた窓。

積み重なった書類。

 

どこから手をつけたら良いかわからず、ため息をこぼす。

目を逸らしてテレビでも見るか。

目を逸らして昼寝でもするか。

そうやって、部屋はますます散らけてゆく。

 

心理カウンセラーと言う仕事がある。

人の話を聞き、その人の心に明かりを灯す。

言わば、心のお掃除屋なんだろう。

ただし、片付けるのは部屋の持ち主本人だが。

 

まず話を聞く。

聞いて聞いて、またまた聞いて。

部屋の持ち主が、打ち明けるまで待つ。

部屋の鍵を開けてくれるまで待つ。

 

そりゃそうだ。

汚れた部屋を誰が見せたがるものか。

隠していたいのが人間のサガだ。

 

いつしか部屋の持ち主の信頼を勝ち取り、中に通してもらう。

足の踏み場もないような、何年も窓を開けてないような。

そして再び話を聞く。

 

話すと言うことは、部屋の持ち主に自覚させる効果がある。

心に何があり、何が片付けられないのかを。

山積みになった物は何か。

部屋の中にあるものをリストアップさせる。

 

人間、この自覚することがとても大事。

何に悩み、何に怯え、何に悲しみ、何に怒りを持っているか。

それを客観的にわかることが大事。

 

さて、そこからまずは「ゴミ出し」をする。

あからさまにいらないものを袋に詰め込む。

心配していても仕方ない感情を袋に詰め込む。

「いつか地震が来るかもしれない」

「空から隕石が落ちてくるかもしれない」

そんな自分じゃどうしょうもできない悩み事を。

 

さて次に、いるものといらない物に分ける。

可能な限り荷物を減らす。

着てない服。

期限の過ぎたクーポン券。

いつか観ようと思ってるDVD。

 

だいぶ部屋が明るくなってきた。

ゆっくりゆっくり整理して。

ゆっくりゆっくりイメージして。

住みたい部屋を、生きたい未来を。

理想を自分の手元に引き寄せる。

 

シンプルに欲張らず。

大事なものだけ部屋に置く。

あれもしたい、これもしたい。

そんな感情が部屋を散らかす。

幸せは数じゃない。

一つのものを慈しみ、愛でることをいうのだから。

 

光の差す部屋。

スッキリ何もないけれど、お客さんを招きたくなる部屋。

お花なんか飾ったのはいつぶりだろう。

朝目覚めるのが楽しくなった。

 

心にも部屋があって、

定期的に掃除や整理をしなくちゃならない。

動けなくなるその前に。

微笑み生きるその為に。