薔薇の花にはトゲがある。

その美しさに似つかわず、

指に血が滲むほどの鋭いトゲを持つ。

 

何を思って神様は、薔薇にトゲを授けたのだろう。

大いなる喜びの陰に潜む涙達。

皆、スポットライトの側が一番暗いことを知らない。

 

人の目は光に強く反応するようにできている。

心も同じ、その美しさ、その喜び、その光に意識を奪われる。

けれど、それを支えるのはトゲや涙や暗闇だったりする。

 

賞賛を贈られるのはいつもヒーロー。

悪役はいつもお払い箱。

けれど実は歌になるのは、そんな賞賛されないモノゴトだったりする。

 

「不幸の方が幸せより種類が多い」

ある人が言った言葉を思い出す。

 

消えてゆくものに、邪険にされるものに歌を贈りたい。

嫌われ者に、陰で涙する者に歌を贈りたい。

歌という眼差しを向けていたい。

 

薔薇に触れたら指に血が滲んだ。

神様はなぜ、美しい薔薇にトゲを授けたのだろう。