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ギョームブラック監督「宝島」(2018年製作の映画)

 

L'île au trésor/Treasure Island

製作国:フランス 上映時間:97分 ジャンル:ドキュメンタリー

あらすじ

パリ北西にあるレジャー・アイランドでのひと夏。ある者たちにとっては冒険、誘惑、ちょっとした危険を冒す場所。他の者たちにとっては避暑地、現実逃避の場所となっている。世界の喧騒と離れ、海水浴を楽しむ幼い子供たち、人目につかない湖で日向ぼっこをする老人、小さな王国で人々はそれぞれにキラキラとした一日を楽しむ。

 

ギヨーム・ブラック

 

『女っ気なし』(2011)、『やさしい人』(2013) のギヨーム・ブラック監督が、子どもの頃によく通った場所であり、敬愛するエリック・ロメール監督の『友だちの恋人』(1987)の舞台にもなったフランス北西部の都市セルジー・ポントワーズにあるレジャー・アイランドでのひと夏を切り取ったドキュメンタリー。 老若男女、多様な人々に密着、観察しながら、カメラの存在をまったく感じさせずに自然な姿を切り取ることで、見る者に懐かしく、美しく、切ない、ある夏の思い出を共有させる傑作。フランスの映画誌「カイエ・デュ・シネマ」の2018年ベストテン第10位に選ばれた。

ブルーレイが発売になったので、今年に入ってようやく鑑賞。2018年と公開時期はずいぶん前だが日本では公開されず、JAIHOで2022年から配信されていた。JAIHOに入ればいいのだが、自分はアマゾンにNetflix、U-NEXTまで入っているんでどれかを諦めねばならないので、今までJAIHOは入っておらず・・・

 
しかし、最初にみた時は驚いた。ドキュメンタリーらしからぬ映像が出来上がっていたし、音も綺麗に整音されていた。人物も綺麗にカットで繋がっていて、小気味いいテンポのドラマを見ているかのようなテンションにさせられる。そして見たことの無いような面白い公園に多様な人種の人たちが押し寄せている。公式サイトにもあるが一夏のセルジー・ポントワーズにある公園の風景を切り取ったドキュメンタリーなんだが、、、どうやら見ていくとそうではないらしい。
当時フランスはマクロン政権になったばかりで保守旋風が世界中に吹いていた背景がある。フランスのこの場所では、有色人種や多様な宗教が入り乱れて、移民国家としてのフランスの側面が見える。そしてそんなフランスにあって、この場所のこの時間はみんなそんな嫌なことを忘れてバカンスに勤しむ。若者は恋や、家族と一緒に楽しんだり、大人たちはゆったりとした時間を過ごし、みんなそれぞれの楽しみに明け暮れている。そう、世界中の不穏な景色は一切ない。まるで宝島のような場所である。
 
ギョームブラックがそんなことを意識したかは不明だが、自分にはそう受け止めることができた。そしてラストカットで涙があふれてしまった。僕だけではないはず。
 
あれから5年以上が経ち、さらに世界中では戦争だったり、紛争や、差別に格差など、深刻さはますばかり。こんな場所が世界のどこかに残ってくれることを祈るばかりである。