韓国ドラマ「紳士の品格」は韓国ドラマの短所が露骨に出ている悪作 | 気になる映画とドラマノート

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 韓国ドラマ「紳士の品格」は、シン・ウチョル、キム・ウンスクコンビの「ロマンチック・トラジ・コメディー」ドラマの2012年版だが、この作品はこのコンビの作品の中でも別格に悪い。

 なにが悪いかというと、この作品で演出のシン・ウチョルは、同窓生で現在41歳の男性の友人たち4人を登場させているが、もっとも奇妙なのは、4人の自宅が描かれると、どう観ても、4人そろって、(日本でいえば)年収2000万以上は確実にありそうな内装の部屋に住んでいるのだ。

 そして、すべての場面で、登場する女性たちは、かならず、いま高級美容室で念入りにセットしたばかりという整った髪をして、日常会話をし、歩く街路はすべてすっきりと雑然とした感じが払拭されている。

 演出家シン・ウチョルとキム・ウンスクは、以前に「パリ」や「プラハ」を舞台にしている。この時の登場人物たちは、いっかいの警察官やアルバイトで暮らしながら、脚本家の勉強をする学生だった。よく考えると、韓国の警察官がなぜプラハに何日も滞在しているのかありえないし、韓国の自動車会社の御曹司がなぜパリに何日もいるのかわからなかった。また、作家の勉強をしている学生が、なぜパリにいなければならないのか、これもおかしな話で、つまりやはり風景の「ロマンチックな感じ」を求めて、パリやプラハを選らんだのだろうと思う。

 その装飾的動機はさておき、恋愛ドラマになかなか見るべきところがあったから、キム・ウンスク作品は、定評があるのだが、今回の「紳士の品格」は、この「舞台背景に高級感をつけて」ロマンチックな感じを強調するという演出の手法が、度が過ぎたものになっている。

 日本でも、「トレンディードラマ」という名をつけて作られたドラマは、主人公がサラリーマンであるとき、部屋が多少とも、2割増し、3割増しの高級感のある部屋に住んでいた。

 日本のドラマが2割増し3割増しの部屋登場人物が住んでいるなら、(アメリカもそんなものだろう)この「紳士の品格」は3倍4倍のゴージャスな生活空間に、「韓国の中流上層」の人々は住んでいるかのように、描かれている。これは、あまりにも、誇張されているぶん、何かしら演出家シン・ウチョルとスタッフたちのなかに、病的な感覚を思わせる。

 たしかに、ゴージャスで色とりどりな家具調度と大きなテレビのある場面は、まちがいなく見栄えはよい。そして、登場する女性たちが完璧に化粧しているのは、きたなくはない。しかし、度がすぎると、よしてくれよ、いったいどこの国の話なんだ、こんな豊かな国は世界中どこにもないではないか、という嫌な感じをもたざるをえない。

 「紳士の品格」は、韓国ドラマのなかにけったいな感覚があることを証明する見本のような作品だ。