日韓の歴史と将来の関係を考える時、必読本 呉 善花「韓国併合への道」 | 気になる映画とドラマノート

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 著者の呉 善花オ・ソンファさんは、1956年韓国済州島生まれ。1983年に留学生として来日。現在日韓文化協会理事(ただし、2011年現在の資料ではない)

 現在日韓関係本は、まさに汗牛充棟、どれを読んでいいのか迷うほど、多くの本がある。私も相当数読んできたが、呉 善花オ・ソンファさんのこの「韓国併合への道」は極めて重要な本だと思う。

 というのも、わたしの考えでは、日本と韓国の一般国民が最後まで遺恨を残す点は、明成皇后の件であろうと考えている。実際、NHKなどで市民討論を催すとこの件が韓国人の口から出される。この問題は、非常にやっかいで、明成皇后がロシア依存に執着していたこと、(それは、その後ソ連が日本人6万人を不当にシベリアに抑留して死なせたことからも、相対的に間違いであった)そして、いまで言えばフィリピンのイメルダ夫人のような悪女であったことは、韓国では教育されていないのである。ところが、かといって、どんなに、間違っていて、また、民衆を圧制、苛政によって苦しめる支配者であっても、他国の軍隊が殺害するべきではなかったのではないか、というひけめが日本側には、残る。ただ、いずれにしても、「立派な王妃を無残に日本が殺害した。」だから日本は許しがたいという感情は、明成皇后を立派な人と思っている限りは、まことに当然の感情で、ひとたび、歴史をひもとけば永遠に日本と韓国の溝になる最大の歴史的事件であるのは間違いないのではないか、と考えられる。事実この事件は日本に非がある。が、同時に私たちが(皮肉にも)ドラマでいやというほど知るように、明成皇后は、外戚勢道政治によって、親戚一族が利益を独占して、小中華事大主義に基づいてロシアに依存していたのであり、けっして他国に対して民族の自立を保持して独立しようというのではなかった。

 私が一部の嫌韓論者と異なるのは、日本を愛しているがゆえに、韓国に反発するのではない。、日本国内にも、「薬害エイズ問題」「肝炎訴訟」「水俣病」等々の、国家対民衆の対立場面があるがごとく、李氏王朝と民衆のはげしい対立、その後の朝鮮支配層と貧しい農民との対立こそが、重要で、日帝が朝鮮民衆を苦しめたというのは、事の本質をはずしているという、(細かな事実を抜いて、大きな枠組みで言うと)考え方に立っている。

 親日という概念には、二つある。併合期間中は、単に、自分の地位と時節迎合のために、日本勢力におもねった人々。もうひとつは、清国、ロシア、日本のうち、どの国に学ぶことが、朝鮮を近代化して、苦難の民衆を救うことになるか、という苦渋の選択を強いられたその結果としての、やむをえない「親日」である。いまの韓国の歴史認識では、後者の「親日」があったことがあえて隠蔽されている。

 しかし、呉 善花オ・ソンファさんのような数少ない優れた韓国生まれの知識人が、少ないながらも存在して、韓国人自ら、歴史の真実を発掘し続けているのも、確かだ。こういう営為が日本と韓国の本当の信頼と和解の基礎になることを私は信じて疑わない。

 なお、日本の右翼と保守派は、基本的に大東亜戦争肯定論にたち、左翼、進歩主義知識人たちは、どの本を見ても、日本帝國主義が弱い中国、韓国を侵略したという見方に立つ。が、私と日本のなかの数少ない思想家は、こう考えている。

 日本帝國主義と中国侵略、韓国侵略という図式は、国家対国家、民族対民族の図式を固定化するものでしかなく、確実に、当時中国支配増は中国人を弾圧していたのであり、虐殺もしていた。韓国も、同様である。そして、日本人もまた、日本の支配層の失策によって、数多くの人々が犠牲になったのだと。アメリカ人も同じ。なぜか、このような視点が左翼右翼ともにない。

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