高難度ジャンプによる戦略 | 九段の真希のパッチワークな日々

高難度ジャンプによる戦略

激動の女子フィギュア界がロシア4回転旋風で3極化へ(THE PAGE) 

「GPファイナル」が終わって明らかになった女子シングルの「タイプ」について書かれています。

※画像はテレビ朝日より~

ロシアの3天才の名前が覚え切れない人のために、こんなことを↓言っていました (フリー演技前)。

「トリプルアクセルを跳ぶのは コストルナヤ」

「4回転ルッツで高い得点なのは シェルバコワ」

「いろいろな種類の4回転を跳ぶのは トゥルソワ」と…。

3極化…というのは、

① 4回転ジャンプを跳び、技術点(TES)が高い選手たち(シェルバコワやトゥルソワ)

② ジャンプは従来の「3Lz-3T」「3Lz-3Lo」までで、演技構成点(PCS)の高さで勝負する選手たち(ザギトワやメドベージェワ等)

③ トリプルアクセルジャンパー(コストルナヤ、紀平梨花)

ということになるようです。

昨年は①の二人と③のコストルナヤがまだジュニアでしたので、ほとんどの試合では ③紀平梨花選手がTESを稼いで勝利。
彼女が不調だった「世界選手権」では ②の代表格のザギトワ、メドベージェワ、そして ①の一人であるトゥルシンバエワ選手(カザフスタン)が2位に食い込む結果となりました。

しかし 今年は3天才がシニアに参戦し、様相がすっかり変わってしまいましたね。


今はまだ、①の選手たちはトリプルアクセルが跳べず、逆に③の選手たちの4回転ジャンプは成功していない。

しかし、いずれ (早ければ3月の「世界選手権」までに) ①③の選手ともに 4回転&3A両方のジャンプが跳べるようになり、1つのグループに統合されるかもしれません(第4の「ハイパージャンパー」グループが出来ると言うべきか)。

4回転ジャンプ1つの基礎点は 3回転の倍近くになる。
昔、大部分の女子選手が②だった時は、トータルで210点取れば優勝できたものが、今ではかなり厳しいことになる。

「四大陸(非ユーロ)選手権」は相変わらず紀平選手有利かと思いますが、「ヨーロッパ選手権」は やはりロシア3天才の独壇場になりそうです (いずれも代表に選ばれれば…の話)。



トゥクタミシェワ選手(ロシア)のように、歳を重ねても4回転ジャンプに挑戦し、「練習では跳べる」状態にまで持ってこれる選手もおられますが、
ほとんどの ②タイプの「ベテラン女子」にとっては、新ジャンプをマスターして ①あるいは③のグループに入ることは 文字通り“至難の技”です。

ソチオリンピック以降、男子は(トリプルアクセルは当然として)4回転ジャンプを0~1種類を跳ぶ選手が ②(パトリック-チャン等)であり、

2種類跳べる選手が ③(フェルナンデス等)、

そして3種類以上マスターしている選手が ①として頂点を争うようになっているわけです(ネイサン-チェン、羽生結弦、ジョウ、宇野昌磨…等)。

トップの選手の演技構成点(PCS)での格差は10点未満であることが多いので、これはプラス4回転1本の成功で埋まってしまう。

先ず 多種類の4回転ジャンプ成功を目標とし、演技力、表現はあとからブラッシュアップするという戦略が功を奏しているチェン、シェルバコワ、トゥルソワ選手等を見ていると、
「北京オリンピック」に間に合うよう、同じ戦略で成長しようとする若手が これからは増えるのだろうなと思います。

ならば 観ている方も「あの選手はジャンプは凄いが表現力が…」「多種類マスターしていない」などと 気の短い批評はせず、それも成長の過程(途中)を見せてもらっているのだと弁えながら、“長い目”で捉えることも必要なのかなと思います。