氷上のロマンティシズム | 九段の真希のパッチワークな日々

氷上のロマンティシズム

ショパン(1810年生~49年没)は ヨーロッパ ロマン主義の代表的な作曲家。
「ピアノの叙情詩人」と評されるとともに、 祖国ポーランドの悲運に痛憤する激情の作曲家とも言われます。


※ロマン主義 (romanticism)…

18世紀後半~19世紀前半にヨーロッパで興った文学、哲学、芸術上の理念や運動。

ルソーの思想や「シュトゥルム・ウント・ドランク(疾風怒濤)」運動 ( 1770~80年頃、ドイツに興った若い世代による文学運動。シェークスピア崇拝とルソーの影響の元、ドイツ的に屈曲した啓蒙思想の万能、合理主義、形式主義への抗議として興った。感情と内発的生命力を極度に強調する非合理主義 ) に端を発し、
17世紀以来の古典主義を「人間精神の内奥の力を否定したもの」として攻撃。

何よりも個性や自我の自由な表現を尊重し、 知性よりも情緒を、 理性よりも想像力を、 形式よりも内容を重んじた。

そして古典主義の時代以前の 中世とルネサンスの精神に、 また自然との直接的な接触に霊感を求めた。

ロマン主義は政治的思想と結ばれて、 19世紀の多くの革命運動の指導原理となった。
また精神分析学への道を開くなど 現代の思想に与えた影響は極めて大きい。(ブリタニカ)

ロマン主義は感情の解放を主張する。
夢や空想の世界に憧れ、 個性・感情などを重んじた。

絵画ではドラクロワ、 音楽ではシューマン、ショパン、 ベルリオーズらがその代表。(広辞苑より抜粋)





「バラード第1番」2014-15年



今、 フィギュアスケートの男子シングルでは 4回転ジャンプを入れた高難度の構成をこなせる選手が 高い得点を得て 上位に来ることが多く、 それが 偶然か必然か、 東洋系ばかり…という状態になっています。


しかし、 女子シングルや カップル競技を見ると、 やはりフィギュアは西洋的な音楽への造詣の深さがモノを言うスポーツなのだなぁ…と思います。


オペラ、 ワルツ、 バレエなども含め、 クラシカルな音楽がオーソドックスで、 ロックや ジャズ等は お遊び的な音楽と、 ジャッジに思われているのでは?と PCSを見ていると感じます。


ですから 五輪に向けての曲選定で、 特に失敗が許されないショートは クラシックが多くなると思っていますが、

「無難」というだけではなく、 また耳に心地好い音楽だからというだけではなく、

その作品、作曲家の背景を知っておくことが、 「プログラムを滑り込む」上では大切なんだろうな と 思います。



観る側も もちろん トリビアを知っていた方が 楽しく観られます。
「ショパン」は 凄いマニアな方もたくさんおられるので、 そういう方のブログを見るのも楽しいですね。





「バラード第1番」2015-16年


羽生結弦選手の、 ショートの世界最高得点を叩き出した、 ショパンの「バラード第1番」。

他の選手のショートも含め、 このプログラムだけが 110点を越える点数を出している ( 110.95点…GPF2015。110.53点…世界選手権2016 )。強い曲です。



原曲はもっと長く、 途中明るい曲調の部分もあるのに、 羽生選手は(あるいは振り付け師のジェフリーーバトル氏は) その部分をカットし、 全体的にマイナーで抑えた曲調にまとめています。


その中で ピアノの一音一音に スケートの動きから指先までの細かな表現を合わせる…。
お披露目の DOI(2014年)と 最初の1年ちょっとは苦労しておられた試合もありましたが、 最後にはぴったりはまった、 完成されたプログラムとなりました。






ここに新しく習得した4回転ループジャンプと、 試合で実行すれば 世界初となるかも知れない 後半の4回転ー3回転のジャンプを組み入れたら、…いやがおうでも「世界最高得点更新」の期待は高まります。

もちろん平昌五輪での高得点も…。




ショートが鉄板プログラムとなることが明らかになりましたので…



「Hope&Legacy」2016-17年 フリー



フリーは 思い切り個性的なプログラムを作って欲しいですよね。




「SEIMEI」2015-16年 フリー



…って、 毎年「個性的」なんですけれど。


良い意味で 常に周囲の期待の遥か上の表現をされる羽生選手のことですから、

五輪の歴史に残るプログラムを、 また作られることでしょうね。






↑ オナカ~!も凄いけど、 ジャンプの高さが凄いですねぇ! リンク狭いのに…。



※お写真各所よりお借りしました。
ありがとうございます。