今日は
いつかは絶対に立ちたい劇場
シアターコクーンに

舞台『フェードル』

を観劇してきました。







1677年、ブルゴーニュ座の初演を皮切りに
以降、世界各地で上演されてきた名戯曲。

日本では2017年に上演しましたが、前回は観に行けなかったので
今年の再演は観に行けて本当に良かったです。

演出は、いつか必ずご一緒したい栗山民也さん。

栗山さんの演出は描写が本当に美しく繊細で、なんといってもシーンを立体的に浮かび上がらせる照明使いが本当に綺麗でいつも惚れ惚れしてしまいます。
あの空間で生きれたらなんと幸せなことか。
まずはいち早く自分の力量を上げて早く同じステージに立てるように頑張らなくては。








演者の皆様、言うまでもなく圧巻の演技でした。

演技というより
そこにしっかりと“生きていた”からこそ
カーテンコールも5回じゃ済まないぐらいの
終演後のお客様方の高揚があったんだと思います。


翻訳劇は、元々の国の文化の違いや国民性、表現の仕方などが違うので
元の戯曲を単純に日本語訳に直して表現しただけでは、何も心に入ってこないものとなってしまいがちです。
その戯曲を飲み込み、生きれる、生かせる役者が居て初めて
その人物に魂が宿って息遣いをもリアルに感じることができます。



今の近代演劇にはいろんな表現の仕方がある。

芝居のみならず
ダンス
殺陣
アクション
パワーマイム
プロジェクションマッピング   等々


カテゴリー分けされるとなると
ジャンルも様々。

小劇場演劇
ミュージカル
歌舞伎
商業演劇
大衆演劇
2.5次元演劇   等々


全てが総合芸術で
全てが素晴らしい。
どれも人の心を動かすことのできる
素晴らしい文化・技術だと思います。


ただ、いくら外見だけの見た目や技術で見繕っても
伝えられる熱や想い
お客様をその作品へと引っ張り込める力にはある程度の限界がある。
人の心を動かすには、内側を作らないと意味がない。
その人物になって、その人物に血を通わせ、その人物としてその場で相手の言葉を受け取り会話を成立させる。
これがなければただのコスプレ劇となり兼ねない。



最近まで僕が出演していた舞台
『東京原子核クラブ』
作・演出のマキノノゾミさんも、いつもこう言っていました。


「血を変えろ」


と。



役を演じるにあたって
自分の中に流れている血から全て“役の血”に変える。

もちろん、血なんて変えれるわけないし
その役の人生を生きてきたわけではないので、あくまで想像などでしか作りようがないが
そういう作業こそが役を作り上げる上で、表現する上で別れ道となる。
その役の生まれた環境・趣味嗜好・周りとの立ち振る舞い方など、台本には書かれていない情報のサブテキストをどれだけ多く持っておけるか。
これがあるかないかで、役が出せる奥行は雲泥の差となる。
観客として作品を観ていて、役に、作品に入り込める時は、これがしっかりしているというわけだ。

これは基本的なことだが、
役者は自らの経験則がモノを言う。
普段の生活で起こる全ての事柄が、自らの芸の肥やしとなり武器となる。


物を食べる動作
飲み物を飲む動作
座る動作
物を持ち上げる動作
人とぶつかった時
買い物をしている時
考え事をしている時
怪我をした時
楽しそうな人を見た時
悲しそうな人を見た時
強そうな人を見た時
泣いている人を見た時

その場の光景、動き、変化などを記憶しておくことで、役に瞬時に“リアルに”昇華することができる。



話が逸れてしまったけど
とにかく内側の密度があるか否かで作品は大きく左右されるし
その人物の濃度も変わってくる。




今日観た『フェードル』は言うまでもない。

心の底から拍手喝采でした。





とやかく言ってきましたが
自分もまだまだ未熟過ぎるので、諸々偉そうに言えた口ではない。

全てはお客様に身を持って提示していくのみ。





そんな今日一日、観劇を終えて頭の中でいろんな思いを巡らせておりました。










さてさて
そんなこんなで改めまして

『東京原子核クラブ』

ありがとうございました!







緊急事態宣言下でどうなるか分からない状況でしたが
なんとかゴールテープを切る事ができました。

『中止』

という結果にならなくて本当に良かったです。

一人一人の感染対策の賜物だと思います。

ありがとうございます。





全員初めてのキャスト陣でしたが
皆さん気さくでスムーズに稽古に参加することができました。

僕は稽古に合流する前に、前の作品があって遅れての合流だったので
合流初日に軽く全員の前で挨拶をした際、ちょっと明るめで話したら案の定、そういう空気ではなかったのか、あとで自分の首を絞めたくなるほど殺伐としてて

あ、やったな。

と肝が冷えました。笑





まぁでもそんなことでは怯まないですがね。☺︎





そんなことはさておき
濃密な読み合わせからの立ち稽古と
あっという間に約1ヶ月の稽古も終わり
本番。





幕が開くと、稽古場では聞こえなかったお客様の笑い声の助け舟が至る所で流れてきて
物凄く気持ちの良い戯曲だなと思いました。


安穏とした日々の中に蠢く暗い影。

激動の時代を必死にもがいて生きる人々。

いろんなことを考えさせられたし
役者としても多くの事を学び、成長できました。

マキノさんの作品に参加できたこと。
この戯曲に出会え、生きれたこと。
この座組みに参加できた事。
誇りです。






あ、終わったから言える裏情報ですが

トイレに立て篭もった橋場がしていた、おしっこ。



あの音、出していたの
実は僕なんです。笑

裏でばっちりスタンバイして
水を垂らして音を出してました。

しかも軍服姿で。


めっちゃシュール。笑





そんな軍服姿でおしっこの音を出してる姿を
前楽の時
富佐子演じる霧矢さんに袖から動画を撮られてて
あとで爆笑しました。笑い泣き


観たい方は霧矢さんに聞いてみてください。笑







いろいろありましたが
凄く充実した感謝の約1ヶ月でした。




心残りがあるとしたら
こういうご時世なのもあって
一度も全員でご飯に行けなかったことかな。


これは今やどこの座組みでも当たり前なこと。

第一優先はまず感染対策ですからね。

それが徹底できていなければ、公演自体ができなくなってしまう。
本末転倒です。



都内もだんだんと減少傾向にあるようですが
引き続きこの伝統文化の灯火を消さないよう
細心の注意を払って支えて盛り上げていきましょう。







『東京原子核クラブ』





本当にありがとうございました!!














いやいや

最後、軍服姿じゃないんかい!笑