会社は少しずつ良くなっていった。

歯車が一つずつ嚙み合っていく実感があった。

 

一度は大量離職でもう駄目なんじゃないかと思った時もあったけど、それでも頑張って一緒に乗り越えてくれたメンバーには本当感謝している。

 

型も出来つつあったし、あとはこの歯車を少しずつ前に進めていくだけだった。

 

資金繰り

ある日、CFOから資金繰りの相談を受けた。

会社の資金がこのままのペースでは枯渇してしまうと。

 

確かに、人件費の比率は上がっていた。

世間的にも賃上げという波はきていたし、派遣比率より社員比率の方が高まっていた。

派遣であれば業務委託ということで免税対象にもなるが、社員だと法定福利費もかかる。

かと言って派遣中心の組織づくりは危険だし、二の舞になるだけ。

柱があった上での派遣であれば別だけど、それはこれからの話。

人件費はコンサルティングの事業をする上では必要経費であるし、ある意味原価でもある。

削る訳にもいかない。

 

人件費という意味では、社長が正式にC社へ籍を移した。

C社の社長は、これまでA社の役員を務めており、A社から役員報酬を得ていた。

これまで社長が現場をあまり見ていなかったのも、A社を見ていたからで仕方ない。

 

※相関関係※

合弁を組んだ相手方:A社

役員になる前に勤めていた会社:B社

A社とB社で合弁でつくった会社:C社

 

それ以外の不要コストは極力削減していった。

 

何より交際費。

社長の交際費を削っていただくように打診した。

 

申し訳ないが顧問料も削れる限り削った。

社長が連れてきている顧問には、社長から話していただけるようにも打診した。

 

賃料も、レンタルオフィスを解約した。

 

ただし、残念ながら社長の交際費が減るまでには時間がかかったし、顧問に話していただくことも社長は話す話すと言っておきながら話していただいていなかった。

 

そして上場にもお金はかかる。

監査法人費用も馬鹿にならなかったし、上場のための原価計算をするために入れたシステム費用も高かった。

 

出来る限りのコスト削減はしたが、売上よりもまだコストの方が高かった。

売上を伸ばさなければいけない。

ただ、売り上げがなかなかついてこなかった。

 

そこで社長より営業代行を使おうという話になった。

アポイントがないと成約に繋がらない、売上をつくるにはアポイントの創出が必要だと。

採用するよりもコストが低いという。

 

ロジック的には間違っていない。

その時点では多少体力もあったのでコストを投下することになった。

効果検証まではデータが必要なので、費用対効果が見込めなければやめようということでスタートした。

 

BPO(営業代行)

1社BPOをスタートさせた。

そしてもう1社、社長がB社の社長と話し、B社の子会社へBPOすることになった。

 

初めのBPO先は3か月やってみて費用対効果が合わずに4か月でやめた。

しかしB社の子会社のほうは、あまり費用対が合わなかったが社長がBPOを止めることはなく、なんなら1件あたりの単価を上げてほしいという交渉を受け、単価を上げてしまった。

そのためにBPOコストはかさんでいった。

 

売上を上げなければいけない、そのためにコストを使う。

それは施策、戦略という意味では必要なことかもしれない。

ただし、コストを使ったら売上を上げる、というシンプルなことが成せないのであれば、早期に判断しやめるべきである。

それを止められなかったし、代替案を出すことが出来ていなかった私にも責任はある。

 

実際、これまで販促費を使わずともほぼインバウンドで受注出来ていたことが強みだった。

それなりにサイトパワーもあったし、そこからの流入での成約率は高かった。

クリエイティブチームも抱えていたし、すでにあるリソースを使い、サイトからの流入を増やせば、BPOコストでの経営圧迫はもう少し抑えられたのではないかと思う。

 

BPOをストップし、サイトからの流入に切り替えていこうとしていたタイミングだった。

 

ファクタリング

そしてもう一つ。

ファクタリングをしてしまったこと。

 

ファクタリングとは、事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)を指す。

 

早期に現金化できるという点は、キャッシュイズキング(Cash is King)であるベンチャー企業にとってとても心強いサービスである。

しかし、そこには手数料という大きな弊害があることを忘れてはいけない。

 

現場を見ることが多かった私は、資金繰りや上場準備については社長とCFOに任せっきりだった。

社長に資金繰りのところを大丈夫そうかと聞いた時に、ファクタリングすればああで、こうで、と話していた時に気付くべきだったし、もっと手数料のことを強く言うべきだった。

CFOから相談をもらった時には、ファクタリングの返済がキャッシュフローを圧迫していた。

 

社長の頭の中では、ファクタリングが常態化していた。

キャッシュフローをまわすことに精一杯だったんだろうと思う。

常態化はとても危険だし、ファクタリングが当たり前じゃないこと、手数料だってかかることを強く伝えた。

経理担当者から、だいぶ言いましたね、と言われるくらいだった。笑

 

ただそこからファクタリングでの資金繰りはしなくなった。

 

そのファクタリングの手数料も終わるタイミングがくる頃だった。