「力を抜くこと」が知りたいからといって、それを追求しても見つけにくいものです。
そんなときは「力を入れること」を探しても良い。
力を入れている状態がわかるということは、それと同時に力を抜いている状態がわかるということです。
「自分が力を入れてしまっている」ことに気づかないままの練習はダメ。
力感を区別できるようにするために、「力一杯」と「思いきり」の二つに別けて素振りします。どちらもMAXスピードで振るように。
まずは「力一杯」から。
・身体の重みが上側になるように
肩の上側に力が入る。胸が上がる。胸式呼吸。
・打球の瞬間、指先、足先にグッと力を絞り込む
地面にしがみつくように踏ん張る(足先に力を入れる)ことで、手先に力を入れやすくする。
・呼吸が急激に止まるように
息を止め、身体を「締める、閉める、占める、絞める」ことで、筋肉の収縮を促す。
・身体の各部位を、意識
腕、足、首など、それぞれの部位を意識できるほど筋肉を収縮させるということ。
はじめは各部位をそれぞれやる。その後は、複数の部位を意識。今度は全身に力を入れてやってみる。
これらをやると、意識は身体の内側に向かっていきます。外部の刺激は何も受信できず、力を入れているという実感だけが残る。
このときの感じを覚えておく。
次は、「思い切り」です。
「思い切り=思いを切り離す=意識せず勝手にやってしまう=筋力でやるのではなく身体の重みでやる」
・身体の重みを使ったスイング
重みが使える高さを確保して、振り出す。
重みでラケットが動き出すまでは、筋力を使わない。受け身の姿勢から。
・軽く足が浮いている状態のスイング
足先に力が入らないことで、手先の力を抜く。
・楽な呼吸で
目安は、歩いている時の呼吸。
筋肉の収縮を防ぐ。
「力を抜く=思い切り=意識できない身体の変化」という、身体の重みに任せた感触を味わう。
ここでの「意識できない」とは、何も感じないということではない。「力を入れる」「力を込める」「身体を閉める(締める)」という、(自分が自分自身に向けて)力を入れる努力感は少ない。
努力感が少ない代わりに、動いたときの刺激の差異は感じやすいということです。
「思い切り」とは、そのとき受ける刺激をすべて感じ取るということ。そのことを、そのまま、丁寧に見ようというのが本義です。
この2つの素振りを交互にやってください。
それらの実感がハッキリしてくると、プレーしているときの実感もわかってきます。
実感がわかると、それに対して働きかけることができるようになる。
「あ、今のは力一杯だった。次は、思い切りにしてみよう」ってね。
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先日、他人のレッスンを見ていたときのことです。
指導者が「もっとビシッと、思いっきり振れ!」と生徒に叫ぶ。叫ばれた生徒は、「はい!」と返事して力一杯ラケットを振る。
頑張っているだけでは、何も上手くいきません。