梅雨はあっという間に終わり
夏。
まだ夏の初めなのですが、
夏も後半に近づき、
暑さもまさにピークとなる時期の
時候の挨拶に
「三伏(さんぷく)」という言葉があります。
「三伏の候」「三伏の猛暑」と
手紙や葉書の前文に書くなど、
時候を表す言葉として用いられていました。
最近ではあまり見かけなくなってしまいましたが、
俳句の季語としても活躍していた言葉だそうで。
閑話休題。
今回の『シン八犬伝』は、
里見家に新たな光が差し込むお話です。
義実の評判は周辺に伝わり、
隣国の武士たちから、
「ぜひ、我が娘を。」
と婚姻を希望する者も多くなりました。
義実は
思案ののち
その中の上総の国、
万里谷静蓮(まりやじょうれん)の娘、
五十子(いさらこ)と結婚し
一男一女を授かります。
長女が生まれたのは、夏
三伏の時節でであったので
伏姫と名付けられました。
くまちゃん:犬が好きだからってことじゃないんだね。
🌸 伏姫(ふせひめ) 🌸
なんとも凛(りん)としたまなざし。
そして、透き通るような声。
生まれたときから、
どこかただならぬ気配を感じる姫君でございました。
くまちゃん:この子……なんかオーラあるニャ〜!
伏姫は、やさしくて、聡明で、
だれからも慕われる姫に育っていきます。
ところが、伏姫は
夜となく昼となくむずかって、
すでに3年を経過しながらも
物を言うこともできず、
笑いもせずただ泣くだけ。
義実も五十子も大変に心配して
3年間医療の限りをつくし、
高僧賢者の加持祈祷あれこれ試みましたが
どれもこれも効果なし。
安房の洲崎大明神というさびれた神社。
この神社のふもとに洞窟があり、
その洞窟に石像がありました。
これが役の行者(えんのぎょうじゃ)
その霊験は、一度祈願すれば
成就しないことはないと
語り継がれておりましたとさ。
🧘♂️ 役の行者、現る
そして、
ある日――
五十子はわずかなお供を連れて
伏姫とともに洲崎大明神へ
お参りに出かけたのです。
娘を思う母親の執念・・・。
山道をすすむ一行の前に、
ふいに一人の異形の僧が現れたのです。
「これは里見の姫君ではござらぬか。
参拝の帰りならば、わしが加持して進ぜよう。」
そこで五十子は、何かを感じ、
その翁に事情を包み隠さず告げたのです。
翁はうなずきながら
「真実を申し上げよう。
この子には霊の祟りがついておる。
この子は不幸に生まれている。
お祓いは難しくないが、
禍福はあざなえる縄のごとし。
例えば、1人の子を失って、
のちにたくさんの命が行き助けを得れば
その禍は禍ではない。
禍福のありようは皆かくのごとしである。
喜んではいけない。
悲しんでもいけない。
城へ帰り着いたら、このことを
義実殿にも告げよ。
これをさしあげよう。
おまもりにせよ。
いずれ思い当たり、得心することがあるじゃろう。」
💠 八つの珠、宿命の印
行者は懐から、
ひとつの**数珠(じゅず)**を
取り出しました。
それは、
八つの玉から成る不思議なもので――
それぞれにこう書かれておりました。
仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌
そして、伏姫の首に静かにかけると、
役の行者は風のように姿を消したのです。
くまちゃん:なんニャそれ!? 未来から来た説あるニャ!
物語は、次なる章へ進みはじめました。
🐾 次回予告:「八房、現る」
次回の『シン八犬伝』第7回は……
⚔️ 神犬・八房(やつふさ)登場!
伏姫と禁断の山籠りへ――
いよいよ、八犬伝最大の悲劇が近づきます。
お楽しみに!




