『CDよりレコードの方が音が良い!』

 

若い方でも、80年代以前の音楽が好きな方なら一度は聞いたことがある言葉ではないでしょうか。

 

実際、近年は竹内まりやさん、山下達郎さん、吉田美奈子さん等、シティ・ポップが海外でもブームになっている影響もあり、レコードへの注目度がかなり上がっています。

 

特にレコードの魅力と言われている点は、

 

・ジャケットが大きく、所有欲を満たしてくれる

 

・針を落として音楽を聴くひと手間が良い

 

・温かみのある音がする

 

等でしょうか。

 

特に、「温かみのある音がする」に関係してくるのが「CDよりレコードの方が音が良い」というお話ですね。

 

これは本当なのか?という疑問に対して、今までCDは1000枚以上、レコードは100枚ほどコレクションしてきた私の体験談をもとに解説していきたいと思います。

 

 

先に結論を言うと

 

「理論上はレコードの方が音が良いが、常にCDより高音質で聴くのは難しい」

 

というのが、私なりの見解になります。

 

私よりはるかに詳しい方々がこの理論について解説しているので、詳しくは「CD レコード 違い」等でググっていただければと思うのですが、CDはデジタルメディアなので、どんな音源でも「44.1khz 16bit」という形式に統一されます。

 

簡単に言うと、制作された音源を圧縮して収録するのがCDというメディアです。

 

対してレコードはアナログメディアであり、数字で表せる形式に圧縮されることなく音源が収録されます。

 

大雑把に言うとこのような違いがあり、つまりCDではカットされてしまう帯域の音がレコードには入っているから、CDよりレコードの方が音が良い、と理論上は言えるようです。

 

 

しかし、実際に聴いてみると一概に「レコードの方が音が良い」と言えないのが難しいところです。

 

確かに、先述のように「温かみのある音がする」というのは事実です。圧縮されていない分、レコードはCDより柔らかい音に聴こえます。

 

また、CDや配信でしか音楽を聴かない人でも、LP盤の1曲目に針を落とすと「おおっ!」と感動でするような、迫力のある音が体験できると思います。

 

しかしレコードの最大の弱点のひとつが、いわゆる「内周歪み」というやつです。

 

レコードは外周から内周に向かって針が進んでいくことで音が再生されます。

 

見た目から分かるように、一番外側に収録された1曲目と一番内側に収録された最後の曲では、盤に刻まれている音の溝の広さが全然違います。

 

基本的には外周から内周に向かうにつれて、どんどん音が悪くなっていっていくのがレコードというメディアの特徴です。

 

内周に向かうにつれて溝の幅が狭くなり、それを針が上手くトレースできないことで音が歪んでしまう現象が「内周歪み」と言われています。

 

これが非常に厄介であり、1曲目を聴いて「おおっ!」と感動していたのに、A面最後の曲はビリビリと音割れして聴いてられない、なんてことがよくあります。

 

これを解消し、内周に収録された楽曲までしっかり高音質で聴こうとすると、いいプレーヤーやいい針を揃えなければならず、レコードを再生するための設備に沢山のコストがかかってしまいます。

 

レコードの音質は再生環境によって左右されるため、高級機材を揃えて聴くのと、入門機で聴くのとでは全くの別物になってしまうんです。

 

それに対しCDや配信では、収録曲順で音質が変わることなどはもちろんないですし、出口であるスピーカーさえ良ければ、パソコンで再生しようがコンポで再生しようがラジカセで再生しようが、大きく音質が変わってしまうこともありません。

 

また、何よりレコードは非常に繊細なので、盤に傷をつけてしまうと針飛びやノイズの原因になってしまったり、埃でパチパチノイズが乗ってしまったりしますが、もちろんCDや配信はそんな悩みとは一切無縁です。

 

でも、いい針といいプレーヤーで聴くレコードの音には、CDや配信では体験できない迫力があるのも事実です。

 

自分が音楽に対して何を求めるかによって、聴くメディアを使い分けるのがいいと私は考えています。

 

 

最後に、個人的に思う音響面以外でのレコードのメリット、デメリットをまとめておきますので、是非ご参考にして、音楽ライフを楽しんでいただければと思います。

 

 

レコードのメリット

 

 

・ジャケットが大きく存在感がある

 

CDに比べて圧倒的にジャケットが大きいので、「音楽を所有している!」という感覚をCDよりも味わえます。

 

ジャケットをインテリアにするのもオシャレですね。

 

 

・CDより安く手に入る場合がある

 

特に松田聖子さんや中森明菜さん、山口百恵さん等、昭和歌謡のレコードは当時大量に売れ、大量に手放されているので、中古屋さんに行くと状態がとてもいいレコードが500円以下で売っていたりします。

 

昭和歌謡のCDは、音のいい最新リマスター盤を買おうとすると2500円以上する場合が多いので、フィジカルが欲しいけどあまり高い額が出せない、という場合は状態のいいレコードを探すという手もあります。

 

・CD未リリースの作品がある

 

当時売れた作品なら大半はCDや配信で再リリースされていますが、未だにレコードでしか聴くことができない作品があったりもします。

 

例えば沢田研二さんのライブ盤などは売れたにもかかわらず一切CD化されていません。

 

また、CD化の際にリマスターされなかった作品などは、CDよりもレコードの方が全然音が良かったりもします。

 

例えば矢沢永吉さんや安全地帯の80年代のディスコグラフィーなどはCDで何度も再版されているにも関わらず、いまだにリマスターされていない、こもった音質でしか聴くことができません。

 

こういう作品はレコードの方が単純にいい音で聴けます。

 

 

レコードのデメリット

 

・場所を取る

 

それがいいんじゃないか!と思う方もいらっしゃると思いますが、とにかくジャケットが大きく重量もあるため、保管に困ります。

 

・値段が高い

 

状態が良くても中古で安く買える作品もありますが、逆にCDでは安く買えるのに、レコードは希少盤で高価、という場合の方がどちらかというと多いです。

 

また、新譜がレコード盤でリリースされる場合、基本的にCDよりレコードの方が高額です。

 

・小回りがきかない

 

CDのようにMP3形式でパソコンに取り込むことができないので、カセットテープがない今のご時世では外出先で気軽に聴くことができません。

 

再生した音源をデジタル録音してMP3にする方法もありますが、かなり手間がかかります。

 

・コレクションとして統一感がなくなる

 

これは人によると思いますが、私は好きなアーティストの全アルバムを揃えて棚に飾りたいタイプです。

 

しかし、レコードの時代から活躍しているアーティストの作品を全部CDで揃えることは簡単ですが、全部レコードで揃えるのは難しいです。

 

なぜなら、平成以降の作品はCDでしかリリースされていないものも多いからです。

 

80年代半ばまでのアルバムはレコード、それ以降のアルバムはCDという、凸凹なコレクションになってしまうので、私は全アルバム揃えたいアーティストの作品はまずCDで揃え、特に愛聴している作品はレコードも買っています。

 

・新譜はCD版にしか映像特典が付かない

 

桑田佳祐さんのようにキャリアの長いアーティストや、星野源さんや藤井風さんのような本格派アーティストは、今も新譜をCDとレコードの両方でリリースしています。

 

しかしCDの方が通常版と初回限定版の2種類の形式でリリースされ、初回限定盤には特典映像収録のBlu-rayなどが付いている場合でも、レコードの方は基本的に初回限定版が用意されていません。

 

また、レコード盤の方がリリース日が遅い場合もあります。

 

 

 

それぞれのメディアにいい点、悪い点両方があるので、「レコードの方が偉い!」「CDの方がいい!」ではなく、美味しいところ取りをしながら音楽を楽しむのがいいんじゃないかと私は考えています。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。