じつはぼくのくぼはつじ

じつはぼくのくぼはつじ

老いを認める日々のブログ


テーマ:
    庭に餌を食べに来る野良人をしげしげと眺めたことはないのだが、その日は違っていた。いつものように猫を従えることなく(あるいは猫に従っていたのかも知れないのだが)、野良人ひとり餌を食べに来ていたせいでじっくり観察する事が出来た。野良猫共は時節柄、食欲よりも子孫を残す欲に支配され夜っぴて彷徨い飯どきを寝て過ごしているのだろう。

    餌を食べる野良人は素裸だった。出会った最初からそうなのか、或いは途中でそうなったのかは分からないのだが、そのことがわたしを少し狼狽させた。

「パンツ……」
    わたしは小さく言った。

「パンツ?」

    野良人は訝しげな表情を浮かべ、わたしの視線を敏感に読み取ると己が下腹部に目線を落とし、叫び声を上げると垢まみれの顔を朱に染めた。

    恥ずかしがるところを見ると、野良人はヌーディストでも変態でもないようで、わたしは安心感を憶えた。

「失礼かと思えるが、なんならパンツを差し上げましょうか?いやなに、これから寒くなるゆえ素裸では風邪をひくかと」

    野良人は、こくりと頷いた。

「そうだ、シャワーなどつかってさっぱりしては如何かな」

「よかですか」

「妻がおれば風呂の用意をさせるのだが、なにぶん買物に出ておるので……」


    野良人を風呂場に案内すると、わたしは目星をつけたタンスを漁り、買いおきの下着とここ数年履くことのなかったジーンズを用意した。


                                               つづく

    


    



    

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス