久保新二の
「シコシコメモリー」

今日も生きてしまったなぁ…。
こんなことを毎日思いながら生きてるのさ。
どうせこの世は冗談半分、あとは股倉に聞いてくれ……。

ポルノ映画は飛び込みに限る…が俺の持論だ。

痴漢映画のロケで、伊豆の旅館を借り切っての撮影中で、現場も順調だ。

俺も翌日意気揚々と現場へ到着した。宿の主人が俺を見つけ、

「あら、あんた久保新二さんずら?なしてここさ」

と聞いてきた。

「今回も痴漢役だよ、よかったら現場見においで、撮影隊は何処!」

途端、主人は脱兎の如く撮影している部屋に駆け込み、
「ちょっとお宅ら、撮影やめて出てってくんろ。何が教育映画だ!ポルノだべや。
おら久保新二さんをよ~く知ってっだど。すぐセンズリこくだこの人」

話を聞くと、宿を借りる時は東映の 教育映画 で触れ込み、俺の出願でピンク映画とバレちまい、結局宿を出ることになりスタッフは器材をマイクロバスに乗り込んだ。

主人いわく、自分達の仕事に誇りを持て!ピンク映画ってはっきり言えば協力したと言う。

助監が 「なんで来たのよ久保さん…」

助監が泣きながら訴える。
バカヤロ!お前が宿の入りを指定してきたんだっての……
ピンク映画は一日延びたら大赤字、いや潰れるかも知れないのだ。
監督は台本と睨めっこでつながりを考え、あせる。
「ポルノ映画は飛び込みよ、見つかったらまた移動よ」

何気ない俺の一言で納得した監督はスタッフに指示を出した。
そ、カド番に立った撮影隊は強い。

移動の途中、見つけた一軒の農家に声を掛けたが、誰も居ない様子なので庭先から撮影開始。

このシーンから俺の出番さ。新人の玲子と縁側でスッポンポンで絡む。
玲子がア~ン、アンと透き通る声でよがる…鎖を付けた番犬も同じくよがり声。
「カーット、カットカット」

カメラマンの声。俺の金玉がもろに見えてしまったのだ。

「これはポルノ映画で、ポロノ、じゃないからね」

現場は大笑いで当然NG…
俺が玲子の股間を舐め廻すアップを撮ってる時、

「こらツ、人ン家の庭先でおめえら、裸であにしてるだ~ツ、小汚ねぇ尻出して…」

「やっぱり来たろ、もう来るんじゃねぇかと思ってたよ、監督、他へ移動しよ。
次も飛び込みでさ、さっきのとこからつなげりゃいいよ…セット代節約」

泊まりは車…ロケセットは飛び込み…予算がないピンク映画の映画作りの知恵なのかも…。
ゲリラは強いね、俺達は失うものは何もないのさ…
アデユ~