ジュリエット・ピノシュ主演、今年のフランス映画祭でも上映された
『夏時間の庭』。
なんともう公開中ではありませぬか。うっかりしておりました
だいぶ前に観させていただいたのですが、
フランス映画らしい(というかフランス人らしい)
大人の物語でした。
≪STORY≫
パリ郊外ヴァルモンドアにある有名画家の邸宅に、母親(エディット・スコブ)
の誕生パーティのため集まった、3人の子供たちとその家族。
経済学者の長男フレデリック(シャルル・ベリング)
デザイナーの長女アドリエンヌ(ジュリエット・ピノシュ)
中国で働く二男のジェレミー(ジェレミー・レニエ)
母は画家だった大叔父のアトリエにある絵画などの美術品の数々の行く末
を気にかけていた。フレデリックに自分が死んだら売ってくれと言うが
彼は「子供たちで引き受けるから」と言う。
1年後、大叔父の回顧展のあと、母親は亡くなる。
自分たちで引き継ぐと言っていた美術品の数々だが、それを引き継ぐには
この家に住まなくてはならず、莫大な相続税も支払うことになる。
アドリエンヌは恋人と結婚してアメリカで生活するといい、ジェレミーも仕事の
ある中国から離れないと言う。
子供の頃を過ごした思い出の家だが、大人になった彼らはそれを支える
ことができず…。
≪大人になると美しい思い出は薄れていく≫
『夏時間の庭』いいタイトルですね。
子供の頃は思い切り遊んだであろう庭、思い出がいっぱいつまった家、
だけれど、大人になってしまうと、いまが大切。
思い出だけでは生きてはいけない。
母が亡くなったことは悲しいけれど、だからといって彼女が守ってきた
美術品のコレクションまで引き受けられないと、現実的なおフランスの
方たち。
わかる、わかるけど、第三者的には、せっかく家族でひさびさ集まった
のに、さみしそうなお母さんの姿に切なくなったわ。
ただ日本人なら、「どうする?」「兄さんが決めてよ」「勝手なこと言うなよ」
と、なかなか話の決着がつかなくなりそうな問題だけど、
さすがフランス人、はっきりしてるわ~。
思い出にこだわって生きていけない、この家には住めないと
ちょっと悩みながらもコトは解決。
長女と次男は、自分の将来を迷わず取る、いや多少、母親への申し訳なさも
あったかもしれないが、結論は前から決めていた。
「引き継ぐ」と言った長男だけは最後まで苦悩。
どこの国でも長男って大変なんだわね~としみじみ…。
(↓シャルル・ベリング)
結局、母親の気持ちにいちばん近かったのは、孫たち。
生きることに精いっぱいの親たちに比べ、思い出いっぱいの場所を
最後までいつくしんでいる姿がよかった。
また亡くなった母親の秘密が最後に明らかになるけれど、これも
ちょっと胸が熱くなったな。
(↓ジュリエット・ピノシュ)
うまい演出、うまい役者、美しい映像、オリヴィエ・アサイヤスって、
マギー・チャンの元夫のイメージしかなかったけど、
いい監督ですね。
≪オルセー美術館全面協力≫
この邸宅の美術品はオルセー美術館が全面協力しているそうだ。
ほか個人所有の美術品も。
いずれも鑑賞用として置かれているのではなく、花器や家具などは、
映画では日常使われているものとして登場するのが素敵。
けっこうそのへんに転がってる感じで置かれていたりしたから、
そんなに高価なものだなんて驚き。
目利きじゃないんで、何がそんなにすごいのかがわからないのが
残念ですが~
●『夏時間の庭』(銀座テアトルシネマほか順次全国公開/配給:クレストインターナショナル)
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