ずいぶん前に松竹試写室で観させていただいた、この映画。
やっと公開なんですね。
熟年離婚やらなんやらと、結婚生活の長い夫婦ほど
お互いが空気みたいな存在になり、
かつての情熱を取り戻すのは難しい。
そんな風にあきらめモードになった熟年男女(夫婦)に送る
誠実なラブストーリーが、この映画。
ドラマは3組のカップルの物語。
1:家庭を顧みずに生きてきて、愛人までつくっていたエリートが
長年連れ添った妻と離婚。そして、それぞれが人生の再スタートを切るが。
(夫・中村雅俊、妻・原田美枝子)
2:人気翻訳家と妻に先立たれた医者の男女。翻訳家の女性は一見タカビーだが
医者に対してティーンのように片思い。彼もまんざらでもないようだが…。
(翻訳家・戸田恵子、医者・井上順)
3:魚屋を営む夫婦。夫の糖尿病の治療につきあい、病院へいった妻は、
医者から信じられない事実を告げられる。
(夫・イッセー尾形、妻・綾戸智恵)
この3つの男女のストーリーがからみあい展開していく。
夫婦のカタチとして好きだったのは、3の魚屋のふたりですね。
いっつも仲良しケンカしている姿もかわいらしかった。
また、かつて音楽を志していたダンナと音楽を通じて知り合った妻の
若い頃のエピソードが、後半効いてくるのですよ~。
妻から夫へのプレゼントでウルッとし、イッセー尾形さんの歌う
ビートルズの「ミッシェル」で涙がツツーと。
試写室内でも、ハンカチで目を抑える人多数おりました。
また2のカップル、翻訳家の戸田恵子が、彼の娘に交際を反対され
娘にぶつける気持ちには心が痛くなった。
十代のころは、若い勢いでグイグイ突っ走ることもできただろうが、
中年になってしまうと、そんな勇気は生まれない。
この恋が失敗したら…これが最後のチャンスかと思うと…。
そんな気持ちをうまく表現したシーンであり、セリフでありました。
ちょっとジーンとしたよ。
1のカップル、
離婚した妻の変化にドキッとする夫の様子がよかったけど、
この夫はちょっと身勝手すぎて、ワタクシ的にはう~ん。
でもこういう夫婦いるだろうな、この年代には多いかもしれない。
そう思うと、いちばんリアルな夫婦の姿だったかな。
てっきりベテランスタッフの作り上げた作品かと思ったら、
監督は、32歳の深川栄洋氏、脚本は「ALWAYS 三丁目の夕日」の古沢良太氏
と若いのね。
タイトルはベタですが、気持ちのいい映画。
すっきり感動させてくれる。
若い人が見てもわからないかもしれないが、
アラウンド50世代なら、オススメですわ~。
●『60歳のラブレター』(5月16日より、丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国公開/配給:松竹)
(c)2009『60歳のラブレター』フィルム・パートナーズ