それはきっと、艶の神様がくれた奇跡。
自分でもまだ信じられない事だけれど、私は今、
幕末の京都に居る。
大好きなあの人にお誕生日のお祝いを伝える為に・・
記憶だけを頼りに、何とか桝屋に辿り着いた私は
ひとまず古高さんに協力を求める事にした。
途中、八木邸方面を覗きに行きたい衝動にもかられたりはしたが、色々とややこしい事になって
しまうので、そこはぐっと我慢したのだった。
「へぇ。そう云う事なら、出来る限りお手伝いさせていただきまひょ」
桝屋どのは何も聞かずに協力する事を快諾してくれた。
いい人!この人いい人!!
「それであの・・できれば龍馬さんと翔太君にも一緒にお祝いして欲しかったんですけど。
お2人を探すのは・・難しいですよね??」
「ああ、そんなら。本家の○○はんがよくお遣いに行かはる店の近所か、島原迄の帰り道ら辺に行ってみれば会えるかもしれまへん」
・・・まさに、桝屋どのの言う通りだった。
もしかしたらあの人にも逢えるかも・・と云う期待は空振りに終わってしまったが、
龍馬さんと翔太君にも無事に協力をお願いする事ができた。
そして、龍馬さんが共通の知人を介して彼を呼び出す手筈まで付けてくれる事になったのだった。
あの人は賑やかな事が大好きだから・・・
そう思って現代から持ち込んだお祝いの品々を台車に乗せ、私達は会場となる宿へ向かった。
気の利いたプレゼントは用意できなかったけれど、彼の愛用品をモチーフにした手作りのチョコレートケーキはちょっと頑張ったんだ、うふふ。
皆でバースデーソングの練習もして、歌の後にクラッカーを鳴らすのは龍馬さんに決定~!!
・・なんてやってるうちに、携帯の時計を見ると0時まで既に後1分を切っていた。
龍馬さんが言付けに行ってくれた時、一緒に託けた目覚まし時計のアラームは0時にセットしておいた。
「音が鳴ったら部屋に入ってきて欲しい」と、あの人には伝わっているはずだ。
・・・きっともう、すぐそこまで来てる・・・
その時だった。
「ピピピピピピ・・・!!!」
部屋の前の廊下から聞こえてくるはずのアラーム音が、私の耳元で大きく鳴り響いた。
「ぐわっ!?耳が・・・耳がああああ・・・・!!」
・・・・気が付くと私は、自宅寝室の床に寝そべっていた。
どうやらベッドから落ちたらしい。
頭の横には停止しそこねて大音量でラップを歌う「パラッパラッパー」の目覚まし時計が一緒に転がっていた。
「(゜ρ゜)・・・・夢かよっ
」
思わず独り言なんぞを呟きながら、大人しくなったパラッパを小脇に抱えてのそりとベッドに腰かける。
いつの間に寝てたんだろうか。
でも、念のためアラームセットしといて良かった![]()
違う時代を生きた貴方に、
直接伝える事は出来ないけれど・・・
「晋作さん、お誕生日おめでとう
」
Fin.
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
(これは一体・・・・どう云う事だ。)
坂本からの伝達を聞いて、俺はとある宿に来ていた。
つい、いつもの癖で窓側から来てしまったが、状況を把握する為には丁度良かったようだ。
「じゃあ、最後のとこだけ、も1回行きますよ~!
はーぴばーすでーとぅーゆー↓で、桝屋どのだけは、ゆー↑って上がって下さいね!」
一見、座敷童かと思ったが、童なのは身の丈と着物だけのこの・・女。
先程からまじないのようなものを唱えているようだが、祈祷師だろうか。
もしくは呪術の類か・・・
3人共何の抵抗も見せず一緒に唱えているところを見ると、既に何かの術にかけられているのかもしれない。
かろうじて結城にだけは多少抵抗している感が伺えるが・・・
奇抜な変装を強いられ、坂本に至っては大砲まで担がされている。
結城が抱えている瓢箪型の土の塊のようなものはおそらく爆薬だろう。
この呪術師、3人を操って何処かに焼き討ちでも仕掛けるつもりなのか?
そこに俺まで加えようと云う魂胆か。
(ふん。何処の回し者か知らんが・・・)
まじないを唱え終えた呪術師が、
「どっこいしょ」と言いながら窓枠に腰を下ろした。
(今だ!)
背後から襟を掴もうとした刹那。
「ピピピピピピ!!!」
坂本から預かっていた小箱が大きな音を立てた。
「やかましいっ!」
袂から小箱を取り出し、階下へと叩きつける。
すぐさま空を切った掌の先に向き直ったが、そこに呪術師の姿は無く、
部屋に居たのは唖然とした表情の古高・坂本・結城の3人だけだった。
そして暫くの沈黙の後、疲れ切った様子の結城がぽつりと言った。
「あ、高杉さんお誕生日おめでとうございます」
完

