ある日、うちのボスがオフイスに入るなり、
「いやあ、ようやく下のフロアのジョン(仮名)が、デオドラントつけるようになったぜ! 前は、アレルギーがあるからとかなんとか、って、夏、エレベーターで一緒になったらもう、地獄だったんだぜ」
と、まくしたてた。
私はめったにあわないせいか、ぜんぜん気がついてなかったので、ジョンとやらの脇のにおい情報は、まったく必要ないのだが、まあいい。
女友達の間でも、飲んだ次の日の朝、自分で脇のにおいを嗅ぎながら、
「ねえ、私、におう?」
「うん、ちょっと」
「あー、じゃ、シャワー浴びてくるわ」
となるくらいにオープンな話題。
最初の時は、そのオープンさに、人知れず動揺したものだ。
そういえば、英語で『ワキガ』そのものを表す英単語ってないんじゃないのかなあ。
とにかく、日本? アジア全体なのかな?
ワキガっていうと、かなりレアで、当たりたくない宝くじに当たってしまったような、忌み嫌われる存在になっているが、ここでは違う。
日本であまり、おおっぴらに語られないので、私もよく知らなかったのだが、どうやら、思春期になると一斉に例の『脇のにおい』が始まるらしい。
ボスも、ある日突然、お母さんに無言でデオドラントを渡され、反抗期まっただ中の彼は、「なんだよ、こんなもん、いらねえよっ!」と、拒否したんだそうな。
が、お母さんの圧力に負けて受け取って、ほどなくして自分でにおいに気がついて、おとなしくデオドラント使い始めたとのこと。
と、ボスの脇の下事情まで知ることになる。
これくらいオープン。
どうやら高確率でみんな脇の下がにおうらしいのだが、普段の生活ではほとんど気づかない。
私の元旦那も10年くらいは一緒に住んでたけど、ぜんぜん気づかなかった。
たった一度だけ、においに気づいて、びっくりした。
そして、「そういや、海外に行くたびに、ドラッグストアでデオドラントを大量買いしてたなあ」と思い出す。
たぶん、日本のじゃ生ぬるいのかもしれない。
とにかく、『脇がにおう』ことは、思春期になって脇に毛が生えるとか、髭が生えるとかの、同じラインにあつかわれている。
『そうなるものだから、ちゃんと手入れしましょうね』的な。
で、何が言いたいのかというと、日本で『ワキガ』に悩んでいる人は、早急に英語を勉強して、海外に飛び出すべきだと思う。
びっくりするぐらい、脇のにおいがあってあたりまえの社会だから。