凍っていた鶏肉は程よく溶けて、包丁を入れて切るとサクサクとした軽い音を立てた。


お鍋にごま油を敷いて熱し、皮目から焼いていく。


有名な家政婦さんいわく、後に煮込むのでもしっかりめに焼き目をつけるといいらしい。


香ばしい匂いが十分に立ち上ってきたら、下茹でしておいた大根を放り込み、お肉とよく炒め合わせて油を吸わせていく。

ここで、なんでかふと思った。


これを彼に食べさせてあげたとしたら、喜んだのだろうか。

ごま油と鶏肉と大根なんて組み合わせ、嫌いな男の人は居ないだろう。


まるで彼への気持ちを染み込ませるかのように、私はかなりしっかりめに大根をお肉と一緒に炒めていたのだ。


煮込みの味付けのポイントは麺つゆとすし酢。

すし酢にはお出汁が入っているので、味わい深い風味を演出する。


出来上がったから、お皿に盛り付けた。

汁をなみなみにしてしまうのは、私の癖だ。


「お汁が零れちゃう」って、彼と台所で一緒に笑い合えたら良かったの。


2026年7月26日。

今から3日前のその日付を、ここに記すね。


いつか私がおばあちゃんになったとしても、それでもきっと彼のことは忘れやしないだろう。