国民共通番号制について | 多弦Gutarist Tominha の部屋

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10弦・11弦という普通派では見ることがない多弦なギターを弾くギタリストTomonari.Cのブログ。音楽はもちろん、映画やら小説やら政治やら、思いつくままに書き連ねています。

国民ひとり一人に番号をふり、年金・健康保険・納税記録などを一括管理する「共通番号制度」がどうやら導入されるそうだ。
 僕はこの制度の導入に反対である。ただし、その理由は「プライバシーの侵害」とか「超管理社会の到来」が起こるからではない。もっと単純というか、具体的だ。
こんな番号制度を新しく導入したら、必ず「記録漏れ」とか「手続き漏れ」が起きる。そして、ちゃんと納税し保険料を払い、年金を積み立てていてもその権利を享受できなくなる人が必ず出てくる、そのとき、こうした問題へのフォローを今の官僚機構はたぶんできない、そう思うからである。
 根拠はいわゆる「消えた年金問題」だ。この問題について、僕は「当事者」である。支払ったはずの年金が年金機構に記録されていない。何度かこれらの「消えた年金」について問い合わせたが、未だにその記録は見つかっていない。
 僕の年金記録がなぜなくなったか、その理由はわかっている。日本政府は今から16年前の1997年、「基礎年金番号」という制度を導入した。これは、厚生年金と国民年金の加入者でバラバラだった「年金番号」を統合し、「統一した番号」のもとに「一括管理する」というものだった。ところがそのとき、加入者にある手続き書が送られていた。それがどんなものだったのか、僕には記憶がない。しかし、その手続き書を提出しないと、この「基礎年金番号」のもとへと支払った積立金の記録が反映されない、そういうものだったようだ。僕はその手続きを忘れたがゆえに積み立てた年金の記録が消えてしまったのである。
 そんな重大な手続きを忘れたお前が悪いのではないか、と思う人は多いだろう。しかしである。この「基礎年金番号への切り替え」にあたっての手続きを覚えている人はどれくらいいるのだろうか。
 推測するにあまりいないと思う。なぜなら、会社勤めをしていれば、この仕事は経理の人がやってくれているはずで、自分では何一つ手を動かしていないからである。あるいは自分で書いたかもしれないが、それは係りの人に言われてやったのであって、自分で手続きをした自覚はない人がほとんどだと思う。
僕はたまたまそのころ会社勤めをしていなかった。そして、そんな結果になるとは思わないまま、その書類を放置していてこうなったのである。
これは果たして「自己責任」に帰すべき問題だろうか。わずか一通の書類を提出しなかったというだけで、何十万というお金を払った成果が消えてしまったのである。個人がしでかしたミスとその代償としてみるとき、あまりにもバランスが悪すぎないだろうか。

 僕は今回の「共通番号制」についても、かならず同じような問題が起きると思う。特に今回はざっと考えても、国税庁、厚労省、年金機構と三つの組織がもっている個人情報を統合するのである。同姓同名による記録照合の間違い、番号の入力ミス、僕のような完全に記録が残されていない場合の処理、その都度起こりうるミスを考えると、絶望的な気分になる。出来あがったデータを管理するのはコンピューターだ。しかし、そこにデータを入力し、それが正しいかどうか点検するのは人間なのである。しかも実際に作業にあたるのは正規の公務員ではなく、かき集められたアルバイト・臨時職員である。それが実に過酷な労働条件のもと、公務員のしりぬぐいをさせられていたか、年金問題の時にぼくらは経験済みではないか。そんな杜撰な今の官僚機構に、個人情報を一元的に任せるなんてとんでもないハイリスクなことである。
 個人情報がハッキングによって悪用されるとか、国民の行動がすべて国家に牛耳られるといった批判は確かにするべきである。しかし、それらはすべて官僚機構が100%与えられた仕事をこなすという前提に立っている。現実にはそんなことはなにも保障されていないにもかかわらずである。
 官僚機構にとって、われわれ一般国民の「個人情報」など、ただの一枚の書類=カードにすぎない。たまたま見落としたら、たまたま間違えたら、たまたまやり残しているのにシュレッダーにかけちゃったらそれで終わり。そのことによって生じる個人への不利益の保障のことなどなにも考えてはいない。もし、考えていたら、こんな面倒くさいことをやろうとは思わないからである。

 だが、こんな視点で反対している人はどうやらいないようだ。「消えた年金」の時にあれほど騒がれたにもかかわらず、マスコミもこの点を指摘しない。しかし、もしことが起こった時のリスクは年金よりももっと大きいし深刻になる。特に恐ろしいのは納税記録の混乱によって「払ったはずの税金を督促される」ようなケースである。まったくの個人が仮にこういう立場に立たされた時、どうやって納税したことを証明できるか。特に源泉徴収の所得税の場合、会社が倒産した場合に記録自体が雲散霧消していたりすると納税証明を得ることは本当に難しい。記録がないからというだけで「督促状」がを送られたのではたまったものではない。
 今からでも遅くない、どうかこんなあぶなっかしい制度をやめるよう、提言してもらえないものだろうか。